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Amazon Comprehendとは?料金・使い方から活用事例までわかりやすく解説

Amazon Comprehendとは?料金・使い方から活用事例までわかりやすく解説

「顧客アンケートやSNS上の口コミなど、日々蓄積される膨大なテキストデータから有益な情報を引き出したい」とお考えではありませんか。専門的な知識や環境構築なしで、手軽に高度なテキスト分析を実現したいというニーズは多くのビジネスで高まっています。

AWSが提供するフルマネージド型の自然言語処理(NLP)サービス「Amazon Comprehend」は、まさにその課題を解決するための強力なツールです。機械学習の専門家でなくても、APIを呼び出すだけでテキストデータから感情、エンティティ、キーフレーズといったインサイトを抽出し、ビジネスに活用できます。

この記事で分かること

  • Amazon Comprehendの基本機能と具体的な活用方法
  • 無料利用枠を含む詳細な料金体系
  • コンソールやAPIを使った基本的な使い方と日本語分析のポイント
  • 顧客の声(VoC)分析など、ビジネスでの実践的な活用事例5選

本記事では、Amazon Comprehendとは何かという基本から、主な機能、料金体系、具体的な使い方、そしてビジネスにおける活用事例までを網羅的に解説します。この記事を読めば、Amazon Comprehendを自社のビジネスにどう活かせるかが明確になり、テキストデータ活用の第一歩を踏み出せるようになります。

Amazon Comprehendとは?

Amazon Comprehendは、Amazon Web Services (AWS)が提供する自然言語処理(NLP)サービスです。このサービスを活用することで、Eメール、SNSの投稿、商品レビュー、お問合わせといった非構造化テキストデータの中から、機械学習の専門知識がなくても価値あるインサイト(知見)や関係性を自動的に抽出できます。具体的には、テキストの言語を識別したり、キーとなるフレーズを特定したり、書かれている内容の感情(ポジティブかネガティブか)を分析したりすることが可能です。

プログラミングの知識がなくてもAWSのマネジメントコンソールから手軽に分析を始められるほか、APIを利用して既存のアプリケーションやシステムに高度なテキスト分析機能を組み込むこともできます。

機械学習の専門知識が不要な自然言語処理(NLP)サービス

自然言語処理(NLP)とは、人間が日常的に使っている言葉(自然言語)をコンピュータに処理させ、意味を解析させる技術のことです。通常、高精度な自然言語処理モデルを構築・運用するには、大量のテキストデータによる学習と、機械学習に関する深い専門知識が不可欠です。

しかし、Amazon ComprehendはAmazonが持つ膨大なデータで事前にトレーニングされたモデルを利用するため、ユーザーはモデルの構築やトレーニングを行う必要がありません。これにより、開発者やデータアナリストは、本来注力すべきデータの活用やアプリケーション開発に集中することができます。

Amazon Comprehendが解決するビジネス上の課題

多くの企業では、日々生成される大量のテキストデータを有効活用できていないという課題を抱えています。Amazon Comprehendは、こうした課題を解決するための強力なツールとなります。具体的には、以下のような課題解決に貢献します。

  • 顧客の声の分析:お客様アンケートやレビュー、コールセンターの応対記録などを分析し、製品やサービスの改善点を迅速に特定します。
  • 業務プロセスの自動化:受信した問い合わせメールの内容を自動で解析・分類し、適切な担当部署へ振り分けることで、カスタマーサポートの対応を効率化します。
  • ブランドイメージの把握:SNSやニュース記事などから自社や製品に関する言及を抽出し、世間の評判やブランドイメージの変化をリアルタイムに把握します。
  • コンプライアンスと情報保護:契約書や機密文書から個人情報(PII)を自動で検出し、マスキング処理を施すことで、情報漏洩リスクを低減します。

他のAWSサービスとの違い

AWSにはテキストデータを扱うサービスが複数ありますが、特にAmazon Comprehendは「Amazon Textract」としばしば比較されます。両者の違いを理解することで、目的に応じて最適なサービスを選択できます。

サービス名 主な目的 扱うデータ 得意なこと
Amazon Comprehend テキストの「意味」を理解・分析 プレーンテキスト 感情分析、エンティティ抽出、キーフレーズ特定など、テキストの内容を深く解釈する。
Amazon Textract 画像やPDFから「文字」を抽出 スキャンされたドキュメント、PDF、画像ファイル OCR(光学的文字認識)技術を用いて、ドキュメント内のテキストや表、フォームデータを構造化データとして抽出する。

簡単に言えば、Amazon Textractが画像から文字情報をデジタルデータ化するサービスであるのに対し、Amazon Comprehendはそのデジタル化されたテキストデータの「意味」を解析するためのサービスです。このため、スキャンした契約書の内容を分析したい場合など、両者を組み合わせて利用するケースも多くあります。

Amazon Comprehendの主な機能でできること

Amazon Comprehendは、テキストデータから価値ある情報を抽出するための多岐にわたる機能を提供しています。これらの機能は、大きく分けて「インサイト分析」と「カスタム機能」の2種類に分類されます。プログラミングの知識がなくても、すぐに高度なテキスト分析を始められる点が大きな特長です。

インサイト分析

インサイト分析は、AWSが事前にトレーニングした機械学習モデルを利用して、テキストから様々な洞察(インサイト)を自動で抽出する機能群です。ユーザーはモデルをトレーニングする必要がなく、APIを呼び出すだけですぐに利用を開始できます。

感情分析|ポジティブかネガティブかを判定

テキスト全体の内容を分析し、その感情が「肯定的(Positive)」「否定的(Negative)」「中立的(Neutral)」「混合(Mixed)」のいずれであるかを判定します。各感情に対する信頼度スコアも算出されるため、顧客からのレビュー、SNSの投稿、サポートへの問い合わせといったテキストデータから、製品やサービスに対する評判を定量的に把握するのに役立ちます。

エンティティ抽出|人物や場所などの固有表現を識別

テキストの中から、人名、地名、組織名、日付といった固有表現(エンティティ)を自動で識別し、分類する機能です。例えば、ニュース記事から関連する企業名や人物名をリストアップしたり、顧客からの問い合わせメールから製品名や日付を抽出してデータベースに記録したりといった活用が可能です。どのような種類のエンティティを識別できるか、以下に主な例を挙げます。

エンティティタイプ 説明 具体例
PERSON 人名(個人、キャラクター名など) 山田太郎、鈴木一郎
LOCATION 場所(国、都市、建物など) 東京、霞が関ビル
ORGANIZATION 組織名(企業、政府機関、チームなど) アマゾンウェブサービス、経済産業省
DATE 日付や時間表現 2025年11月17日、午後3時
QUANTITY 数量(通貨、パーセンテージ、数値など) 100円、50パーセント
COMMERCIAL_ITEM 製品名やサービス名 Amazon EC2、iPhone 15

キーフレーズ抽出|テキストの主要な話題を特定

テキストの内容を理解する上で重要となる名詞句(キーフレーズ)を抽出する機能です。これにより、大量のドキュメントの主要なトピックを素早く把握したり、記事のタグを自動生成したりすることが可能になります。抽出されたキーフレーズは、文書の要約や検索キーワードとしての活用も期待できます。

個人を特定できる情報(PII)の検出と編集

テキストデータに含まれる氏名、住所、電話番号、クレジットカード番号、マイナンバーといった個人を特定できる情報(PII)を自動で検出します。さらに、検出したPIIを「*」などの記号で置き換えて編集(マスキング)する機能も提供しており、コンプライアンス遵守や個人情報保護を目的としたデータ処理に不可欠な機能です。

言語検出 テキストの言語を自動で識別

入力されたテキストがどの言語で書かれているかを自動で識別します。日本語、英語、中国語をはじめとする100以上の言語に対応しており、グローバルに収集されるアンケートやSNSの投稿などを言語ごとに分類し、その後の分析処理へつなげる、といったワークフローを自動化できます。

カスタム機能

カスタム機能は、Amazon Comprehendが提供する基本的な分析機能だけでは対応が難しい、より専門的でビジネス固有のニーズに応えるための機能群です。ユーザーが独自のデータセットを用意することで、ビジネスに特化した独自のテキスト分析モデルを構築できるのが最大の特長です。

カスタム分類 独自のラベルでドキュメントを分類

ユーザーが定義した独自のカテゴリ(ラベル)に基づいて、ドキュメントを自動で分類するモデルを作成できる機能です。例えば、「緊急度高」「仕様に関する質問」「料金に関する問い合わせ」といったラベルを用意し、サポートセンターに届くメールを自動で振り分けるモデルをトレーニングできます。これにより、問い合わせ対応の迅速化や業務効率の向上が期待できます。

カスタムエンティティ認識 業界特有の用語を抽出

標準のエンティティ抽出では認識できない、業界固有の専門用語、製品コード、社内独自の管理番号などを、新たなエンティティとして抽出するモデルを構築する機能です。例えば、金融関連のレポートから特定の金融商品名を抽出したり、医療文書から特定の医薬品名や病名を抽出したりすることが可能になります。これにより、より専門性の高いドキュメント分析が実現できます。

Amazon Comprehendの料金体系を解説

Amazon Comprehendの料金は、基本的に処理したテキスト量に応じた従量課金制となっており、初期費用は不要です。そのため、小規模なプロジェクトから大規模なエンタープライズ利用まで、ニーズに合わせて柔軟にコストを管理できます。料金体系は大きく分けて「無料利用枠」「テキスト分析機能」「カスタムモデル」の3つで構成されています。詳細な料金については、Amazon Comprehend の料金ページで確認することをおすすめします。

無料利用枠で気軽に試せる

Amazon Comprehendには、AWSアカウントの新規・既存を問わず、利用開始から12ヶ月間適用される無料利用枠が用意されています。これにより、本格導入前に機能を十分にテストし、コスト感を把握することが可能です。無料枠の範囲内であれば、料金を気にすることなく様々なテキスト分析を試せます。

無料利用枠の主な内容は以下の通りです。

機能 無料利用枠の上限(月間)
テキスト分析API各種 各APIにつき 50,000ユニット(500万文字)
トピックモデリング 最大5つのジョブ(各ジョブ1MBまで)

対象となるテキスト分析APIには、キーフレーズ抽出、エンティティ認識、感情分析、言語検出などが含まれます。

テキスト分析機能の料金

無料利用枠を超えた分については、分析したテキストの量に応じて料金が発生します。課金の単位は「ユニット」で、100文字を1ユニットとして計算されます。各リクエストには、最低3ユニット(300文字)分の料金がかかる点に注意が必要です。

料金は処理量が増えるほどユニットあたりの単価が安くなる段階制が採用されています。以下は、東京リージョンにおける主要な機能の料金表です。

機能 最初の1,000万ユニット/月 次の4,000万ユニット/月 1億ユニット/月超
エンティティ認識 0.0001 USD/ユニット 0.00005 USD/ユニット 0.000025 USD/ユニット
感情分析 0.0001 USD/ユニット 0.00005 USD/ユニット 0.000025 USD/ユニット
キーフレーズ抽出 0.0001 USD/ユニット 0.00005 USD/ユニット 0.000025 USD/ユニット
個人識別情報(PII)の検出 0.0001 USD/ユニット 0.00005 USD/ユニット 0.000025 USD/ユニット
言語検出 0.0001 USD/ユニット 0.00005 USD/ユニット 0.000025 USD/ユニット

※料金は変更される可能性があるため、最新の情報は公式サイトをご確認ください。

カスタムモデルのトレーニングと推論の料金

Amazon Comprehendのカスタム機能(カスタム分類、カスタムエンティティ認識)を利用する場合、料金は「モデルのトレーニング」と「推論(モデルの利用)」の2段階で発生します。

モデルのトレーニングは、作成したモデルのトレーニングにかかった時間に対して課金されます。一方、推論は、作成したモデルをリアルタイムで利用するためにエンドポイントを起動している時間と、テキストの処理量に応じて課金されます。エンドポイントは起動している間、リクエストがない状態でも料金が発生し続けるため、利用しない場合は停止する必要があります。

項目 料金 備考
モデルトレーニング 3 USD/時 秒単位で請求されます。
モデル管理 0.50 USD/月 トレーニング済みモデルごとに発生します。
同期推論(エンドポイント) 0.0005 USD/秒(1推論ユニットあたり) 最低60秒から課金され、エンドポイントを削除するまで継続します。
非同期推論 0.0005 USD/ユニット 100文字を1ユニットとして計算されます。

カスタムモデルは特定の業務要件に合わせてテキスト分析の精度を高められる強力な機能ですが、料金体系が標準機能と異なるため、利用前にはコストシミュレーションを十分に行うことが重要です。

Amazon Comprehendの基本的な使い方とステップ

Amazon Comprehendは、専門的な知識がなくても高度なテキスト分析を可能にするサービスです。その使い方には大きく分けて、AWSの管理画面から手軽に試せる方法と、APIやSDKを利用してシステムに組み込む本格的な方法の2つがあります。この章では、それぞれの方法について、具体的なステップと日本語テキストを分析する際のポイントを解説します。

【ステップ1】 AWSマネジメントコンソールから分析を実行

最も手軽にAmazon Comprehendの機能を体験できるのが、AWSマネジメントコンソールを利用したリアルタイム分析です。プログラミングの知識がなくても、分析したいテキストをコピー&ペーストするだけで、すぐに感情分析やエンティティ抽出といった分析結果を確認できます。

具体的な手順は以下の通りです。

  1. AWSマネジメントコンソールにサインインし、サービス一覧から「Amazon Comprehend」を選択します。
  2. 左側のナビゲーションメニューから「Real-time analysis(リアルタイム分析)」をクリックします。
  3. 表示された画面の「Input text」セクションに、分析したい日本語のテキストを入力します。
  4. 「Analyze(分析)」ボタンをクリックすると、テキストの下にある「Insights(インサイト)」セクションに分析結果が表示されます。
  5. 「Entities(エンティティ)」「Key phrases(キーフレーズ)」「Sentiment(感情)」といったタブを切り替えることで、それぞれの分析結果を詳細に確認できます。

この方法は、少量のテキストを素早く分析したい場合や、Amazon Comprehendがどのような分析を行うのかを試してみたい場合に最適です。ただし、大量のドキュメントを一度に処理するには不向きなため、その場合は次に紹介する分析ジョブやAPIの利用を検討しましょう。

【ステップ2】 APIとSDKを利用したシステム連携

自社のアプリケーションや業務システムにAmazon Comprehendのテキスト分析機能を組み込みたい場合には、APIやSDKを利用します。これにより、大量のドキュメントの分析を自動化したり、顧客からの問い合わせ内容をリアルタイムで分析して担当部署へ振り分けたりといった、より高度な活用が可能になります。

Amazon Comprehendは、さまざまなプログラミング言語に対応したAWS SDK(Software Development Kit)を提供しており、開発者は使い慣れた言語で容易にシステム連携を実現できます。

主な対応SDK
プログラミング言語 SDK名
Python Boto3
JavaScript/Node.js AWS SDK for JavaScript
Java AWS SDK for Java
.NET AWS SDK for .NET
PHP AWS SDK for PHP
Go AWS SDK for Go

API/SDKを利用したシステム連携の基本的な流れは以下の通りです。

  • AWS SDKのセットアップ: 利用するプログラミング言語用のAWS SDKを開発環境にインストールし、IAM(Identity and Access Management)を通じて取得した認証情報を設定します。
  • Comprehendクライアントの初期化: コード内でComprehendサービスクライアントのインスタンスを作成します。
  • 分析APIの呼び出し: 分析したいテキストデータを用意し、目的に応じたAPI(例:感情分析なら `DetectSentiment`、エンティティ抽出なら `DetectEntities`)を呼び出します。
  • 結果の処理: APIから返却されたJSON形式の分析結果をパースし、アプリケーションで利用します。例えば、感情分析の結果が「NEGATIVE」であれば特定のアラートを発するなど、後続の処理につなげます。

詳細な実装方法については、AWSが提供する公式ドキュメント「Using Amazon Comprehend with an AWS SDK」に各言語のコード例が掲載されていますので、そちらをご参照ください。

【ステップ3】 日本語テキストを分析する際のポイント

Amazon Comprehendは日本語の分析にも対応していますが、その精度を最大限に引き出すためには、いくつか注意すべきポイントがあります。

  • 文字コードはUTF-8を利用する: Amazon Comprehendでテキストファイルを分析する場合、ファイルのエンコードはUTF-8である必要があります。これ以外の文字コード(Shift_JISなど)で保存されたファイルを分析にかけると、文字化けが発生し、正しい分析結果が得られない可能性があるため注意が必要です。
  • 適切な前処理を行う: SNSの投稿やレビューなど、非構造化テキストを分析対象とする場合、絵文字やURL、不要な記号などが含まれていることがよくあります。これらのノイズは分析精度に影響を与える可能性があるため、分析を実行する前に、これらを除去する「前処理」を行うことが推奨されます。
  • カスタムモデルの活用を検討する: 医療、金融、法律といった専門分野のドキュメントや、社内特有の用語が含まれるテキストを分析する場合、標準の分析モデルでは意図した結果が得られないことがあります。このようなケースでは、独自のデータセットを用いてComprehendをトレーニングし、「カスタムエンティティ認識」や「カスタム分類」モデルを作成することで、特定のニーズに合わせた高精度な分析が実現できます。
  • 信頼度スコアを確認する: Comprehendの分析結果には、それぞれの項目(例えば、特定のエンティティや感情)に対する「信頼度スコア(Confidence Score)」が含まれています。分析結果は100%正確とは限らないため、特に重要な意思決定に利用する際は、このスコアを参考にし、必要に応じて人間による確認プロセスを挟むことが重要です。

Amazon Comprehendのビジネス活用事例5選

Amazon Comprehendは、その高度な自然言語処理(NLP)技術を活かして、既に多くのビジネスシーンで導入され、成果を上げています。ここでは、具体的な5つの活用事例を紹介し、どのようにビジネス課題を解決し、新たな価値を創出しているのかを解説します。

顧客の声(VoC)分析によるサービス改善

企業に寄せられるアンケートの自由記述欄、ECサイトのレビュー、コールセンターの応対記録といった「顧客の声(VoC: Voice of Customer)」は、サービス改善のヒントが詰まった宝の山です。しかし、その多くは非構造化テキストデータであるため、人手での分析には膨大な時間とコストがかかっていました。

そこでAmazon Comprehendの出番です。感情分析機能を使えば、顧客からのフィードバックが「ポジティブ」「ネガティブ」「中立」のいずれであるかを瞬時に判定できます。さらに、キーフレーズ抽出機能を用いることで、顧客が特に言及している製品の機能やサービス内容、問題点などを具体的なキーワードとして抜き出すことが可能です。これにより、例えば「バッテリーの持ちが悪い」「アプリの操作性が良い」といった具体的な改善点や評価されているポイントをデータドリブンで把握し、迅速な製品開発やサービス改善のサイクルを実現できます。

  • 課題: 大量の顧客レビューやアンケートから、有益な意見を効率的に抽出できない。
  • 解決策: 感情分析で意見のポジティブ・ネガティブを分類し、キーフレーズ抽出で話題の傾向を特定する。
  • 効果: 顧客満足度を低下させている原因を迅速に特定し、優先的に対応することで、サービスの品質向上と解約率の低下に繋がる。

SNS投稿の分析によるブランド評判管理

X(旧Twitter)やInstagramなどのソーシャルメディア(SNS)は、消費者のリアルな意見が飛び交う場であり、企業のブランドイメージに大きな影響を与えます。自社製品やサービスに関する投稿をリアルタイムで分析することは、ブランドの評判管理(レピュテーションマネジメント)において極めて重要です。

Amazon Comprehendを活用すれば、特定のキーワード(ブランド名、製品名など)を含むSNS投稿を収集し、その内容を自動で分析できます。感情分析によって、ブランドに対する世の中のセンチメント(感情の傾向)を把握し、ポジティブな話題が広がっているのか、あるいはネガティブな批判が出始めているのかを即座に検知します。 これにより、いわゆる「炎上」の火種を早期に発見して迅速に対応したり、好意的な口コミをマーケティングキャンペーンに活用したりと、戦略的な広報・マーケティング活動が可能になります。

問い合わせ内容の自動分類とルーティング

多くの企業のコンタクトセンターでは、日々大量の問い合わせがメールやチャットで寄せられます。これらの問い合わせ内容を目視で確認し、適切な担当部署や担当者へ振り分ける作業は、オペレーターにとって大きな負担となっていました。

Amazon Comprehendのカスタム分類機能を利用することで、この振り分け作業(ルーティング)を自動化できます。事前に「料金に関する問い合わせ」「技術的な質問」「返品・交換依頼」といった独自のカテゴリを定義し、過去の問い合わせデータを学習させることで、新しい問い合わせが来た際に、その内容から最適なカテゴリへと自動で分類するカスタムモデルを構築できます。 これにより、問い合わせ対応の初動時間を大幅に短縮し、顧客満足度の向上とオペレーターの業務効率化を同時に実現します。

医療記録や治験データからの情報抽出

医療分野では、電子カルテや治験関連文書、医学論文など、専門的で複雑なテキストデータが大量に存在します。これらの膨大な文書から、特定の疾患名、薬剤、治療法、検査値といった重要な情報を正確に抽出することは、創薬研究や臨床開発のスピードを左右する重要な課題です。

この課題に対し、AWSは医療情報に特化した「Amazon Comprehend Medical」というサービスを提供しています。このサービスは、医学用語に最適化されており、テキストデータから病状、投薬量、解剖学的な部位といったエンティティ(固有表現)を高精度で抽出できます。さらに、それらの関係性(例:「この薬剤が、この症状に対して処方された」)も識別可能です。研究者は、この機能を活用することで、従来は数ヶ月かかっていた文献レビューの時間を数日に短縮し、研究開発を大幅に加速させることが期待できます。

契約書や法的文書のレビュー効率化

法務部門における契約書のレビュー業務は、専門的な知識が求められると同時に、非常に時間のかかる作業です。特に、契約期間、秘密保持義務、損害賠償責任といった重要な条項を見つけ出し、リスクを評価するプロセスは、細心の注意を払う必要があります。

Amazon Comprehendのカスタムエンティティ認識機能を使えば、企業独自の基準で定義した重要な条項や特定の用語(例:「競業避止義務」「管轄裁判所」など)を契約書データから自動で抽出することが可能です。これにより、レビュー担当者は、確認すべき箇所を瞬時に把握でき、チェック漏れのリスクを低減させながら、レビュー作業の時間を大幅に短縮できます。 結果として、法務部門全体の生産性が向上し、より戦略的な業務に時間を割くことが可能になります。

Amazon Comprehend 活用事例の概要
活用シーン 主な利用機能 得られる効果
顧客の声(VoC)分析 感情分析、キーフレーズ抽出 製品・サービスの迅速な改善、顧客満足度の向上
SNSの評判管理 感情分析、エンティティ抽出 炎上の早期検知、マーケティング戦略への活用
問い合わせ対応 カスタム分類 対応時間の短縮、オペレーターの業務負荷軽減
医療データ分析 Amazon Comprehend Medical 研究開発のスピードアップ、情報抽出の精度向上
契約書レビュー カスタムエンティティ認識 レビュー時間の短縮、人的ミスの削減

Amazon Comprehendに関するよくある質問

Amazon Comprehendの利用を検討する際に、多くの方が抱く疑問についてQ&A形式で解説します。

Amazon Comprehendは日本語に対応していますか

はい、Amazon Comprehendは日本語に対応しています。主要な機能であるエンティティ抽出、キーフレーズ抽出、感情分析、言語検出などは、日本語のテキストで利用可能です。以前は一部機能が英語のみの対応でしたが、現在では東京リージョンでも利用でき、日本のビジネス環境で活用しやすくなっています。ただし、構文解析など一部の機能はまだ日本語に対応していない場合があるため、利用したい機能の最新の対応状況を公式サイトで確認することをおすすめします。

プログラミングの知識がなくてもAmazon Comprehendは使えますか

はい、プログラミングの知識がなくてもAmazon Comprehendを使い始めることができます。AWSのマネジメントコンソールを通じて、テキストを入力し、分析結果を画面上で確認する「リアルタイム分析」が可能です。これにより、どのような分析ができるのかを直感的に試すことができます。

一方で、アプリケーションや既存のシステムにAmazon Comprehendの機能を組み込む場合は、APIやSDKを利用する必要があるため、プログラミングの知識が求められます。まずはコンソールで機能を試し、本格的な導入の際に開発者と連携するのがスムーズな進め方です。

Amazon Comprehendの料金はどれくらいかかりますか

Amazon Comprehendの料金は、主に処理したテキストの量に基づく従量課金制です。料金は機能ごとに設定されており、「100文字を1ユニット」として計算されます。

また、初めて利用するユーザー向けに無料利用枠が用意されています。これにより、一定量まで無料でサービスを試すことが可能です。カスタムモデルのトレーニングなど、一部無料利用枠の対象外となる機能もあります。料金は改定される可能性があるため、利用前には必ずAWS公式サイトの料金ページで最新の情報を確認してください。

Amazon ComprehendとAmazon Textractの違いは何ですか

Amazon ComprehendとAmazon Textractは、どちらもテキストを扱うAWSのサービスですが、その目的が根本的に異なります。簡単に言うと、Textractが画像から「文字を抽出」するのに対し、Comprehendはテキストの「意味を分析」します

両者の違いを以下の表にまとめました。

サービス名 主な目的 処理対象 主な出力
Amazon Comprehend テキストの意味を理解・分析する(自然言語処理) テキストデータ エンティティ、感情、キーフレーズなどの分析結果
Amazon Textract 画像やPDFから文字情報を抽出する(OCR) 画像ファイル(JPG, PNG)、PDFファイル 抽出されたテキスト、表、フォームデータ

この2つは連携して使われることも多く、例えば「Amazon Textractで請求書PDFからテキストを抽出し、そのテキストをAmazon Comprehendで分析して支払先や金額を特定する」といった活用が可能です。

Amazon Comprehendで独自のモデルを学習させることはできますか

はい、Amazon Comprehendでは独自のカスタムモデルを学習させることが可能です。この機能は「カスタム分類」と「カスタムエンティティ認識」として提供されています。

  • カスタム分類: 自社の基準(例:「仕様に関する問い合わせ」「料金に関するクレーム」など)に基づいて、テキストを自動で分類するモデルを作成できます。
  • カスタムエンティティ認識: 業界特有の専門用語や、製品名、管理番号といった、標準のエンティティでは認識できない固有の表現を抽出するモデルを作成できます。

これらのカスタム機能を利用することで、一般的な自然言語処理の枠を超え、自社のビジネスに特化した高度なテキスト分析を実現できます。

まとめ

本記事では、AWSが提供する自然言語処理サービス「Amazon Comprehend」について、その概要から主な機能、料金体系、使い方、そして具体的なビジネス活用事例までを網羅的に解説しました。テキストデータに隠された価値を引き出すための強力なツールであることがお分かりいただけたかと思います。

この記事の重要なポイントを以下にまとめます。

  • 専門知識不要の自然言語処理: Amazon Comprehendは、機械学習の専門家でなくても、テキストデータから感情、固有表現、主要な話題などを簡単に抽出できるAIサービスです。
  • 多彩な分析機能: ポジティブ・ネガティブを判定する「感情分析」や、人名・地名などを識別する「エンティティ抽出」、個人情報をマスキングする「PII検出」など、ビジネスニーズに応える豊富な機能が揃っています。
  • 柔軟なカスタム対応: 独自のラベルで文書を分類する「カスタム分類」や、業界特有の専門用語を認識させる「カスタムエンティティ認識」により、自社のビジネスに特化した高精度な分析が可能です。
  • 始めやすい料金体系: 毎月一定量まで無料で利用できる枠が用意されており、小規模なテストから気軽に始めることができます。本格利用時も処理量に応じた従量課金制で、コストを最適化できます。
  • 幅広いビジネス活用: 顧客アンケートの分析、SNSでの評判管理、問い合わせの自動振り分けなど、様々なシーンで活用することで、業務効率化やサービス品質の向上に大きく貢献します。

日々蓄積されるお客様の声、日報、問い合わせ履歴といったテキストデータは、まさに「ビジネスの宝の山」です。Amazon Comprehendを活用すれば、これまで見過ごされてきた貴重なインサイトを発見し、データに基づいた的確な意思決定を下すことが可能になります。

まずは無料利用枠を使って、身近なテキストデータの分析から始めてみませんか。その一歩が、あなたのビジネスを大きく飛躍させるきっかけとなるはずです。

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