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AWS Batchの使い方|ジョブ定義から実行までの手順をわかりやすく解説

AWS Batchの使い方|ジョブ定義から実行までの手順をわかりやすく解説

AWS Batchは、AWS環境でフルマネージドなバッチ処理を実現し、インフラ管理の手間を大幅に削減できるサービスです。EC2やFargateなどのリソースを自動でスケーリングするため、コストを最適化しながら数万件規模のジョブを効率的に処理できるのが最大のメリットです。

本記事では、AWS Batchの仕組みや4つの主要コンポーネントといった基礎知識から、マネジメントコンソールを使った具体的な設定・実行手順までを網羅的に解説します。Lambdaとの使い分けや料金体系についても整理しているため、導入検討に必要な情報がひと通り理解できるでしょう。

この記事で分かること

  • AWS Batchの仕組みと4つの主要コンポーネント
  • マネジメントコンソールを使ったジョブ定義から実行までの手順
  • AWS Lambdaとの使い分け基準やFargate利用のメリット

AWS Batchとはどのようなサービスか

AWS Batchは、開発者や科学者、エンジニアがAWS上で数十万件規模のバッチコンピューティングジョブを簡単かつ効率的に実行できるように設計された、フルマネージド型のバッチ処理サービスです。

従来、大規模なバッチ処理を行うためには、サーバークラスターのプロビジョニング、管理、監視、そしてジョブスケジューリングソフトウェアのインストールや保守が必要でした。しかし、AWS Batchを利用することで、これらのインフラ管理業務から解放され、アプリケーションの分析や問題解決そのものに集中できるようになります。

AWS Batchは、提出されたバッチジョブのボリュームや具体的なリソース要件に基づいて、最適な数量とタイプのコンピューティングリソース(CPUやメモリなど)を動的にプロビジョニングします。これにより、AWS Batchはジョブを実行するためのインフラストラクチャを計画、管理する必要をなくし、効率的なリソース利用を実現します。

インフラ管理の自動化とコスト最適化

AWS Batchの最大の特徴は、インフラストラクチャの管理が不要である点と、コストパフォーマンスの高さにあります。必要なリソースを必要なタイミングで自動的に確保し、ジョブが完了すればリソースを解放するため、無駄なコストが発生しません。

特に、AWSのスポットインスタンス(Spot Instances)と組み合わせることで、オンデマンドインスタンスと比較して大幅にコストを抑えながら大規模な計算処理を行うことが可能です。従来のオンプレミス環境や手動管理のクラウド環境とAWS Batchを比較すると、以下のような違いがあります。

比較項目 従来のバッチ処理環境 AWS Batch
インフラ構築 サーバーの手配・設定が必要 フルマネージドで自動構築
スケーリング 手動または複雑なスクリプトが必要 ジョブ量に応じて自動スケーリング
ソフトウェア
管理
スケジューラーのインストール・保守が必要 標準機能として統合済み
コスト管理 ピーク時に合わせたリソース確保が必要 使用した分のみの従量課金

対応するコンピューティング環境とユースケース

AWS Batchは、実行環境としてAmazon EC2だけでなく、サーバーレスコンピュートエンジンであるAWS Fargateもサポートしています。これにより、コンテナ化されたアプリケーションをEC2インスタンスの管理なしで実行することも可能です。

主なユースケースとしては、以下のような分野で広く利用されています。

  • 金融サービスにおけるリスク分析や市場データの処理
  • ライフサイエンス分野での遺伝子データ解析や創薬シミュレーション
  • メディア業界における画像・動画のレンダリングやトランスコーディング
  • 機械学習モデルのトレーニングや推論などのデータエンジニアリング

このように、AWS Batchは特定の業界に限らず、非同期で実行される大量の計算処理が必要なあらゆるシーンで、その効果を発揮します。

AWS Batchの仕組みと4つの主要コンポーネント

AWS Batchは、クラウド上でのバッチ処理を効率化するために、主に4つのコンポーネントが連携して動作する仕組みになっています。ユーザーはサーバーのプロビジョニングや管理を意識することなく、実行したい処理の内容と条件を指定するだけで、AWSが自動的に最適なリソースを割り当てて実行します。

このサービスを構成する主要な要素は以下の通りです。

  • ジョブ (Jobs):実際に実行される処理の単位
  • ジョブ定義 (Job Definitions):ジョブを実行するためのテンプレート
  • ジョブキュー (Job Queues):実行待ちのジョブを管理する場所
  • コンピューティング環境 (Compute Environments):ジョブが実行されるリソース基盤

これらのコンポーネントがどのように連携し、バッチ処理を実現しているのかを詳しく解説します。

バッチ処理の単位となるジョブ

ジョブは、AWS Batchにおいて実行される作業の最小単位です。一般的には、シェルスクリプト、Linux実行ファイル、またはDockerコンテナイメージとして定義されたアプリケーションがこれに該当します。

各ジョブは、後述する「ジョブ定義」に基づいて起動され、パラメーターや環境変数を個別に指定することも可能です。ジョブが投入(Submit)されると、AWS Batchは状態を管理しながら実行まで遷移させます。

ジョブの主なステータス遷移は以下の通りです。

  • SUBMITTED:ジョブがキューに登録された状態
  • PENDING:依存関係の解消などを待機している状態
  • RUNNABLE:実行に必要なリソースの空きを待っている状態
  • STARTING:コンテナの準備など、実行開始処理中の状態
  • RUNNING:実際にジョブが処理を実行している状態
  • SUCCEEDED / FAILED:正常終了、または失敗した状態

詳細なジョブの状態遷移については、AWS公式ドキュメントも参照してください。

実行内容を記述するジョブ定義

ジョブ定義は、ジョブを実行するための「設計図」や「テンプレート」にあたるものです。どのDockerイメージを使用するか、どの程度のリソース(CPUやメモリ)を割り当てるかなどをあらかじめ定義しておきます。

ジョブ定義を作成しておくことで、同じ設定で繰り返しジョブを実行したり、一部のパラメータだけを上書きして実行したりすることが容易になります。また、ジョブ定義はバージョン管理が可能であるため、処理内容の更新や切り戻しもスムーズに行えます。

ジョブ定義で指定する主な項目は以下の通りです。

設定項目 内容
コンテナイメージ 実行するDockerイメージ(ECRやDocker Hubなど)
リソース要件 ジョブに割り当てるvCPU数やメモリ量
IAMロール ジョブが他のAWSサービス(S3やDynamoDBなど)にアクセスするための権限
環境変数 コンテナ内で利用する環境変数の設定
マウントポイント ホスト側のボリュームやEFSなどをコンテナにマウントする設定

実行待ちを管理するジョブキュー

ジョブキューは、投入されたジョブが実際に実行されるまでの間、待機する場所です。すべてのジョブは必ずいずれかのジョブキューに投入されます。

ジョブキューには優先順位(Priority)を設定することができ、緊急度の高いジョブを優先的に処理させることが可能です。また、1つのジョブキューに対して複数の「コンピューティング環境」を紐付けることができ、リソースの空き状況やコスト戦略に応じて、どの環境で実行するかを制御します。

例えば、優先度の高いキューはオンデマンドインスタンスに、優先度の低いキューはスポットインスタンスに割り当てるといった使い分けが一般的です。

リソースを提供するコンピューティング環境

コンピューティング環境は、実際にジョブが実行されるインフラストラクチャです。AWS Batchでは、大きく分けて「マネージド型」と「アンマネージド型」の2種類がありますが、通常は運用負荷の低いマネージド型が推奨されます。

マネージド型コンピューティング環境では、AWS Batchが必要なリソース(EC2インスタンスやFargateタスク)を自動的にプロビジョニング、スケーリング、および終了します。

  • Fargate:サーバーレスでコンテナを実行。インフラ管理が不要で、起動が早い。
  • EC2 (On-Demand):安定したリソース確保が可能。長時間実行されるジョブに適している。
  • EC2 (Spot):余剰リソースを利用するため、コストを大幅に抑えられるが、中断のリスクがある。

ユーザーは、最大vCPU数や使用するインスタンスタイプ(例:c5.large、m5ファミリーなど)を指定するだけで、あとはAWS Batchがジョブの量に応じて自動的に環境をスケールアウト・スケールインさせます。

AWS Batchを利用するメリットと導入効果

AWS Batchを導入することで、開発者はサーバーのプロビジョニングや複雑なスケジューリング・ソフトウェアのインストールといったインフラ管理作業から解放されます。バッチ処理基盤をクラウドネイティブ化することで得られる具体的なメリットと、ビジネスにもたらす効果について解説します。

インフラ管理不要!フルマネージドによる運用負荷の軽減

従来のオンプレミス環境や、単にEC2インスタンスを並べただけの環境でバッチ処理を行う場合、バッチ管理ソフトウェアのインストール、設定、そしてサーバー自体のOSパッチ適用やメンテナンスが必要でした。

AWS Batchはフルマネージドサービスであるため、これらの「差別化につながらない重労働(Undifferentiated Heavy Lifting)」をAWS側に任せることができます。開発者はジョブのコード記述と実行条件の定義だけに集中できるため、アプリケーションの開発サイクルを加速させ、運用コストを大幅に削減できるのが最大のメリットです。

自動スケーリングとスポットインスタンスによるコスト削減

バッチ処理の需要は常に一定とは限りません。月末処理や大量のデータ分析時のみリソースが必要になり、それ以外の時間はサーバーがアイドル状態(待機状態)になることがよくあります。

AWS Batchは、投入されたジョブの量や要件に応じて、必要なコンピューティングリソース(vCPUやメモリ)を自動的にプロビジョニングし、処理が完了すれば自動的にリソースを縮小します。これにより、無駄な待機コストが発生しません。

  • 必要な時だけリソースを確保:ジョブがない時はインスタンス数をゼロにできるため、固定費を極限まで抑えられます。
  • スポットインスタンスの活用:AWSの余剰リソースである「スポットインスタンス」をAWS Batchと組み合わせて利用することで、オンデマンド価格と比較して最大90%程度の割引価格で計算リソースを利用可能です。
  • 異種インスタンスの混在:コスト効率の良いインスタンスタイプをAWS Batchが自動的に選択して立ち上げる構成も可能です。

ジョブの依存関係管理と優先順位付けの容易さ

複雑なバッチ処理では、「処理Aが終わってから処理Bを実行する」「処理Cは他の処理よりも優先してリソースを割り当てる」といった制御が必要です。これを自前のスクリプトで実装すると、エラーハンドリングや再試行ロジックが複雑になりがちです。

AWS Batchでは、ジョブ間の依存関係を定義する機能が標準で備わっています。また、複数のジョブキューを作成し、それぞれに優先度を設定することで、緊急度の高いジョブを先に実行させるといった制御も容易に実現できます。

他のAWSサービスとのシームレスな連携

AWS BatchはAWSエコシステムの一部として統合されているため、他のサービスとスムーズにデータをやり取りできます。

  • Amazon S3:入力データの取得や、処理結果の出力先として直接利用できます。
  • Amazon CloudWatch:ジョブのログ(標準出力・標準エラー出力)は自動的にCloudWatch Logsに転送され、リアルタイムでの監視や過去のログ調査が可能です。
  • AWS Step Functions:複数のバッチジョブやLambda関数を組み合わせた、より複雑なワークフローを視覚的に定義・実行する場合に連携できます。

【比較表】自前でのバッチ環境構築とAWS Batchの違い

自前でEC2インスタンスを用いてバッチ環境を構築した場合と、AWS Batchを利用した場合の違いを以下の表に整理しました。

比較項目 自前構築(EC2のみ) AWS Batch利用
インフラ構築 OS設定、ミドルウェア導入が必要 不要(コンテナイメージの用意のみ)
スケーリング Auto Scaling設定が複雑になりがち ジョブ数に応じて自動で最適化
ジョブ管理 cronや管理ツールを自前で維持 標準機能で依存関係・再試行を管理
コスト効率 アイドルタイムが発生しやすい 実行時のみ課金(ゼロスケーリング可)

AWS Batchの使い方とジョブ実行の手順

AWS Batchを実際に利用し、バッチ処理を完了させるまでの具体的なフローを解説します。AWS Batchの利用には、事前に実行したいプログラムを含んだDockerイメージを準備し、Amazon ECR(Elastic Container Registry)などにプッシュしておく必要があります。

基本的な流れは、土台となる環境を作成し、そこにジョブの定義を紐付け、最後にジョブを投入するという3ステップです。

コンピューティング環境とジョブキューの作成

最初に、ジョブが実行されるインフラストラクチャ(コンピューティング環境)と、ジョブの待機場所(ジョブキュー)を作成します。AWSマネジメントコンソールには「ウィザード」機能がありますが、本番運用を見据えて個別に設定する手順を理解しておくことが重要です。

コンピューティング環境の作成では、AWS FargateまたはAmazon EC2のいずれかを選択します。それぞれの特徴は以下の通りです。

コンピューティングタイプ 特徴 適しているケース
Fargate サーバー管理が不要で、リソース指定だけで実行可能。起動が早いが、GPUなどの特殊なインスタンスは一部制限がある。 インフラ管理を最小限にしたい場合や、短時間のジョブ。
EC2(オンデマンド) 安定してリソースを確保できる。インスタンスタイプを細かく指定可能。 完了時間がクリティカルな処理や、長時間実行されるジョブ。
EC2(スポット) 余剰リソースを利用するため大幅なコスト削減が可能だが、中断のリスクがある。 中断しても再実行可能なジョブや、コスト重視の大量処理。

環境を作成した後、ジョブキューを作成してコンピューティング環境と紐付けます。手順は以下の通りです。

  1. AWSマネジメントコンソールの「AWS Batch」を開き、「コンピューティング環境」を選択して新規作成する。
  2. プロビジョニングモデル(FargateまたはEC2)と、最大vCPU数などを設定する。
  3. 次に「ジョブキュー」を選択し、新規作成する。
  4. 作成したジョブキューの「接続されたコンピューティング環境」の設定で、先ほど作成した環境を選択し、優先順位を設定して保存する。

ジョブ定義の登録とコンテナ設定

次に「ジョブ定義(Job Definition)」を作成します。これは、どのようなコンテナを、どの程度のリソースを使って動かすかを定めたテンプレートです。

ジョブ定義では、事前にAmazon ECRにアップロードしておいたコンテナイメージのURIを指定します。ここで設定する主な項目は以下の通りです。

  • イメージ:使用するDockerイメージのURI
    (例: 123456789012.dkr.ecr.region.amazonaws.com/my-image:latest)。
  • コマンド:コンテナ起動時に実行するコマンド。
  • vCPUとメモリ:ジョブ実行に割り当てるリソース量。
  • 環境変数:アプリケーションに渡すパラメータ(DBの接続先など)。
  • IAMロール:ジョブがS3などの他AWSサービスにアクセスするために必要な権限。

特にリソース割り当ては重要です。メモリ不足になるとジョブが強制終了する場合があるため、実際の処理内容に合わせて余裕を持った設定を行うことが推奨されます。

AWSマネジメントコンソールからジョブを実行する

環境と定義が整ったら、実際にジョブを送信(Submit)します。

「ジョブ」メニューから「新しいジョブを送信」をクリックし、以下の情報を入力します。

  • ジョブ名:任意の識別しやすい名前
  • ジョブ定義:先ほど作成した定義を選択
  • ジョブキュー:作成したキューを選択

ジョブを送信すると、ステータスが遷移していきます。正常に処理が進むと、「SUBMITTED(送信済み)」→「RUNNABLE(実行可能)」→「STARTING(開始中)」→「RUNNING(実行中)」→「SUCCEEDED(成功)」と変化します。

もしジョブが失敗(FAILED)した場合は、ステータス詳細から理由を確認します。プログラムの標準出力やエラーログは、自動的に連携されるCloudWatch Logsで確認できるため、エラー原因の特定に役立ててください。

詳しい設定項目や最新のUIについては、AWS Batch ユーザーガイドも併せて参照することをおすすめします。

AWS Batchの料金体系とコスト管理

AWS Batchを導入する際、予算計画を立てる上で最も重要なのが料金体系の理解です。多くのAWSサービスと同様に、AWS Batchも従量課金制を採用していますが、その仕組みは非常にシンプルです。

ここでは、具体的にどの部分に費用が発生するのか、そしてどのようにすればコストを最適化できるのかについて解説します。

AWS Batch自体の利用料金は無料

まず押さえておくべき点は、AWS Batchというサービスそのものには追加料金がかからないということです。

ジョブのスケジュール管理、キューの処理、コンピューティングリソースのプロビジョニングといったAWS Batchが提供するオーケストレーション機能は無料で利用できます。ユーザーが支払う必要があるのは、バッチジョブを実行するためにAWS Batchが作成・使用したAWSリソース(EC2インスタンスやAWS Fargateなど)の料金のみです。

課金対象となる主なリソース

AWS Batchを利用する際に、実際に請求が発生する主なリソースは以下の通りです。

  • Amazon EC2インスタンス:ジョブを実行するために起動された仮想サーバーの稼働時間に応じた料金。
  • AWS Fargate:サーバーレス環境を選択した場合、ジョブが使用したvCPUとメモリのリソース量に応じた料金。
  • Amazon EBS(Elastic Block Store):EC2インスタンスにアタッチされたストレージの容量に応じた料金。
  • データ転送:異なるアベイラビリティーゾーン間やインターネットへのデータ送信にかかる通信料。
  • Amazon S3などの他サービス:ジョブが入出力データとしてS3やDynamoDBなどを利用した場合の各サービス利用料。

コンピューティング環境ごとの料金モデル

AWS Batchでは、ジョブの実行環境として「EC2」と「Fargate」のいずれかを選択できます。それぞれの料金体系の特徴を整理しました。

実行環境 料金の決まり方 特徴とコスト傾向
Amazon EC2
(オンデマンド)
インスタンスタイプ × 稼働時間(秒単位) 定価での利用となりますが、中断のリスクがなく安定して稼働します。長時間の処理や期限が厳しいジョブに適しています。
Amazon EC2
(スポットインスタンス)
スポット価格 × 稼働時間(秒単位) オンデマンド価格と比較して最大90%の割引価格で利用可能です。ただし、AWSの都合によりインスタンスが中断される可能性があります。
AWS Fargate vCPU・メモリ量 × 稼働時間(秒単位) インスタンスの管理が不要です。リソース使用量に厳密に基づいた課金となるため、無駄な待機時間を減らせますが、高負荷な処理ではEC2より割高になる場合があります。
AWS Fargate Spot vCPU・メモリ量 × 稼働時間(秒単位) Fargateの利便性を持ちつつ、空きリソースを利用することで通常よりも安価に利用できます。EC2スポットと同様に中断のリスクがあります。

スポットインスタンス活用による大幅なコスト削減

バッチ処理のコストを削減する上で最も効果的なのが、スポットインスタンスの活用です。AWS Batchはスポットインスタンスとの親和性が非常に高く、設計段階から組み込むことが推奨されます。

AWS Batchの管理機能である「マネージド型コンピューティング環境」では、スポットインスタンスの使用を指定するだけで、入札価格の管理やインスタンスの確保を自動で行ってくれます。もしスポットインスタンスが中断された場合でも、AWS Batchが自動的にジョブを再試行したり、別のインスタンスで再スケジュールしたりする設定が可能です。

スポットインスタンスが向いているケース

  • 処理の完了時間に厳密な制約がないジョブ
  • 中断されても途中から再開可能、または最初からやり直しても問題ない短時間のジョブ
  • 大量の並列処理を行い、コストを最小限に抑えたい場合

コスト配分タグによる管理

AWS Batchで複数のプロジェクトや部門のジョブを運用する場合、どのジョブにどれだけのコストがかかったかを把握することが重要です。

AWS Batchでは、コンピューティング環境やジョブ定義にタグを付与することができます。これらのタグは、実際に起動するEC2インスタンスやFargateタスクに自動的に伝播されます。AWS Cost Explorer(コストエクスプローラー)などでタグごとの利用料を集計することで、プロジェクト別のコストを正確に可視化し、予算管理に役立てることができます。

詳細な最新の価格情報については、AWS Batch の料金ページをご参照ください。

AWS Batchに関するよくある質問

AWS Batchの導入や運用において、エンジニアやプロジェクトマネージャーから頻繁に寄せられる疑問をまとめました。サービス選定やトラブルシューティングにお役立てください。

AWS BatchとAWS Lambdaの使い分け基準は何ですか

AWS BatchとAWS Lambdaはどちらもバッチ処理に利用できますが、処理の実行時間と必要なリソース量が最大の使い分け基準となります。AWS Lambdaはイベント駆動型の短い処理に向いており、AWS Batchは計算量が多く長時間かかる処理に最適です。

主な違いを以下の表に整理しました。

比較項目 AWS Batch AWS Lambda
実行時間の上限 無制限(数日間の処理も可能) 最大15分
コンピューティング環境 Dockerコンテナ(EC2 / Fargate) 専用の実行環境(サーバーレス)
適したユースケース 機械学習の学習、大規模なETL処理、シミュレーション APIバックエンド、ファイルアップロード時の軽量な加工、通知処理

処理が15分を超えたり、大量のメモリやvCPUを必要としたりする場合は、AWS Batchの利用が推奨されます。

AWS Batch自体の利用料金はかかりますか

いいえ、AWS Batch自体の利用に追加料金はかかりません。AWS Batchは、ジョブを実行するために背後で起動されるAWSリソースに対してのみ料金が発生します。

具体的には、ジョブの実行に使用されたAmazon EC2インスタンスやAWS Fargateの稼働時間、および保存されたデータのストレージ料金(Amazon EBSなど)が課金対象となります。スポットインスタンスを活用することで、これらのリソース料金を大幅に抑えることも可能です。

AWS BatchでFargateを使うメリットは何ですか

Fargateを利用する最大のメリットは、インフラ管理の手間が大幅に削減される点です。EC2起動タイプではインスタンスのOSパッチ適用やスケーリング設定の管理が必要ですが、FargateではこれらがAWSによって管理されます。

  • 管理コストの削減:サーバーのプロビジョニングやセキュリティパッチの適用が不要になります。
  • セキュリティの向上:各ジョブが独立したカーネルで実行されるため、高い隔離性が保たれます。
  • 高速な起動:インスタンスの立ち上がりを待つ必要がなく、必要なリソースが即座に割り当てられます。

ただし、FargateはEC2に比べて利用できるリソースの上限やカスタマイズ性に一部制限があるため、要件に応じて選択してください。

AWS BatchのジョブがRunnableのまま進まないのはなぜですか

ジョブが「Runnable」ステータスのまま止まってしまう場合、ジョブを実行するためのコンピューティングリソースが確保できていないことが主な原因です。AWS Batchがジョブをキューに入れたものの、それを処理する環境が見つからない状態です。

よくある原因として以下が挙げられます。

  • ジョブ定義で要求したvCPUやメモリ量が、コンピューティング環境のインスタンスタイプの上限を超えている。
  • 指定したVPCサブネットのIPアドレスが枯渇している。
  • AWSアカウントのサービスクォータ(vCPU数の制限など)に達している。
  • コンピューティング環境の設定ミスにより、適切なインスタンスが起動できない。

まずはAWSマネジメントコンソールのダッシュボードで、コンピューティング環境のステータスやエラーメッセージを確認することをおすすめします。

AWS BatchでGPUインスタンスを利用できますか

はい、利用可能です。ディープラーニングや高度な画像解析など、GPUアクセラレーションを必要とするワークロードに対応しています。

GPUを利用するためには、以下の設定が必要です。

  1. コンピューティング環境としてAmazon EC2を選択する(FargateはGPUをサポートしていません)。
  2. PシリーズやGシリーズなど、GPUを搭載したインスタンスファミリーを指定する。
  3. ジョブ定義のコンテナプロパティで、必要なGPU数を指定する。

適切なAMI(Amazon Machine Image)を選択し、NVIDIAドライバなどが組み込まれたコンテナイメージを使用することで、GPUリソースをフルに活用したバッチ処理が可能になります。

まとめ

本記事では、AWS Batchの基本的な仕組みから具体的な設定手順、料金体系までを詳しく解説しました。AWS Batchを活用することで、インフラ管理の負担を最小限に抑えつつ、効率的かつ低コストなバッチ処理基盤を構築することが可能です。

  • ジョブ、ジョブ定義、ジョブキュー、コンピューティング環境の4つの主要コンポーネントを理解して設定する
  • スポットインスタンスやFargateを活用し、コストとパフォーマンスを最適化する
  • 処理時間やリソース要件に応じて、AWS Lambdaとの使い分けを検討する

まずはAWSマネジメントコンソールから、小規模なジョブを作成して実際に動かしてみましょう。自動化されたバッチ処理環境の利便性を、ぜひ体感してください。

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