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Amazon Auroraとは?MySQLとの違いから料金、メリットまで徹底解説

Amazon Auroraとは?MySQLとの違いから料金、メリットまで徹底解説

「高性能なデータベースを導入したいが、運用コストは抑えたい」「サービスの成長に合わせてスケールできるデータベースが必要だ」とお考えではありませんか?AWSが提供するAmazon Auroraは、そんな課題を解決する強力な選択肢ですが、MySQLやPostgreSQLとの違いが分からず、導入を迷っている方も多いでしょう。

この記事で分かること

  • Amazon Auroraの概要とクラウドネイティブなアーキテクチャ
  • MySQLやPostgreSQLとの性能・可用性・コストの具体的な違い
  • 導入によって得られる5つのメリットと事前に知るべき注意点
  • 詳細な料金体系と自社に合ったユースケース

この記事では、Amazon Auroraの基本的な仕組みから、従来のデータベースとの比較、具体的なメリット・デメリット、料金体系、そして代表的なユースケースまでを網羅的に解説します。結論から言うと、Amazon Auroraは商用データベースに匹敵するパフォーマンスと可用性を、MySQL・PostgreSQL互換の使いやすさと手頃なコストで実現する画期的なリレーショナルデータベースです。本記事を最後まで読めば、Amazon Auroraが自社のサービスやプロジェクトにとって最適な選択肢であるかを的確に判断できるようになります。

Amazon Auroraとは AWSが提供するクラウドネイティブなデータベース

Amazon Aurora(アマゾン オーロラ)は、Amazon Web Services(AWS)がクラウドのためにゼロから設計・開発した、高性能なリレーショナルデータベースサービスです。 商用のハイエンドデータベースが持つパフォーマンスや可用性と、オープンソースデータベースのシンプルさやコスト効率性を両立させることを目指して作られました。

「クラウドネイティブ」と表現されるように、従来のデータベースを単にクラウド上で動かすのではなく、クラウドの持つ柔軟性、拡張性、耐障害性といったメリットを最大限に引き出すための独自のアーキテクチャを採用しているのが最大の特徴です。 これにより、極めて要求の厳しいワークロードにも対応可能な、信頼性の高いデータベース環境をマネージドサービスとして手軽に利用できます。

MySQLとPostgreSQLと互換性を持つリレーショナルデータベース

Amazon Auroraの大きな利点の一つは、世界中で広く利用されているオープンソースデータベースである「MySQL」および「PostgreSQL」と高い互換性を持っている点です。 この互換性により、既存のアプリケーションで利用しているコード、ドライバ、ツールをほとんど変更することなく、Amazon Auroraへスムーズに移行することが可能です。

しかし、Auroraは単なる互換データベースではありません。AWSが発表している情報によれば、独自の分散ストレージシステムなどにより、標準的なMySQLと比較して最大5倍、標準的なPostgreSQLと比較して最大3倍のスループットを実現します。 そのため、既存システムのパフォーマンスを大幅に向上させる目的での移行先としても、非常に有力な選択肢となります。

Amazon RDSの選択肢の一つとして提供

Amazon Auroraは独立したサービスと思われがちですが、実際にはAWSのマネージド型リレーショナルデータベースサービス群である「Amazon RDS (Relational Database Service)」で利用可能なデータベースエンジンの一つとして提供されています。 Amazon RDSではMySQL、PostgreSQL、MariaDB、Oracle、SQL Serverといった多様なエンジンを選択できますが、Auroraはその中でも特別な位置づけです。

他のエンジンが既存のデータベースソフトウェアをAWSが管理・運用する形であるのに対し、AuroraはAWS自身がクラウドに最適化して開発したエンジンであるという点が根本的に異なります。 この違いが、パフォーマンスや可用性、スケーラビリティにおけるAuroraの優位性を生み出しています。両者の関係性は以下の表の通りです。

比較項目 Amazon Aurora Amazon RDS (MySQL/PostgreSQLなど)
アーキテクチャ AWSがクラウド向けに独自開発した、コンピュートとストレージが分離した設計 既存のデータベースエンジンをAWSのインフラ上で稼働させる従来型の設計
パフォーマンス 非常に高いスループットと低遅延を実現 標準的なパフォーマンス
可用性と耐久性 3つのAZにまたがりデータを6重にコピーし、高い耐障害性を実現 マルチAZ構成により高可用性を実現可能
位置づけ RDSファミリーの中でも特に性能と信頼性を追求したハイエンドな選択肢 幅広い用途に対応する汎用的なマネージドデータベースの選択肢

このように、Amazon AuroraはRDSという使い慣れた運用管理の枠組みの中で、クラウドネイティブのメリットを最大限に享受できる強力なデータベースサービスと言えます。より詳細な情報は、Amazon Auroraの公式サイトで確認できます。

Amazon Auroraが持つ5つの大きなメリット

Amazon Auroraは、AWSがクラウドネイティブなデータベースとして開発したリレーショナルデータベースサービスです。従来のデータベースと比較して多くの優れた特徴を備えており、ビジネスの成長を強力にサポートします。ここでは、Auroraを導入することで得られる5つの主要なメリットについて詳しく解説します。

メリット1 商用データベースに匹敵するパフォーマンスとスケーラビリティ

Amazon Auroraは、MySQLと比較して最大5倍、PostgreSQLと比較して最大3倍のスループットを実現するとAWSは発表しています。 この高いパフォーマンスは、SSDベースの仮想化ストレージレイヤーをデータベースエンジンと緊密に統合した独自のアーキテクチャによるものです。ログ処理などをストレージノードにオフロードすることで、データベースインスタンスの負荷を軽減し、高いスループットを維持します。

また、スケーラビリティにも非常に優れています。データ量の増加に応じてストレージ容量は10GBから最大128TBまで自動的に拡張されるため、ストレージのプロビジョニングを気にする必要がありません。 さらに、読み取り負荷の増大に対応するため、最大15個の低遅延なリードレプリカを作成でき、高い読み取り性能を維持することが可能です。

メリット2 高い可用性と耐久性でサービス停止を防ぐ

Auroraは、システムの安定稼働に不可欠な可用性と耐久性を極めて高いレベルで実現しています。データは、1つのAWSリージョン内の3つのアベイラビリティゾーン(AZ)にわたり、合計6つのコピーが自動的に作成されます。 これにより、99.999999999%(イレブンナイン)という非常に高いデータ耐久性を誇ります。

万が一、プライマリインスタンスに障害が発生した場合でも、通常30秒以内にリードレプリカの1つがプライマリに昇格し、処理を引き継ぐ高速フェイルオーバーが可能です。 ストレージも自己修復機能を備えており、データブロックやディスクの障害を自動的に検出し修復するため、サービス停止のリスクを最小限に抑えることができます。

メリット3 フルマネージドサービスで運用管理の負担を大幅に軽減

Amazon Auroraはフルマネージドサービスとして提供されており、データベースの運用に関わる多くのタスクをAWSが自動化します。 これには、ハードウェアのプロビジョニング、データベースのセットアップ、パッチ適用、バックアップといった時間のかかる管理作業が含まれます。

これにより、開発者やデータベース管理者は、インフラの管理・運用業務から解放され、アプリケーションの開発やパフォーマンスの最適化など、よりビジネス価値の高い業務に集中することができます。モニタリングやフェイルオーバーなども自動化されており、専門的な知識がなくとも、安定したデータベース環境を維持することが容易になります。

メリット4 保存データの暗号化など高度なセキュリティ

Auroraは、多層的なセキュリティ機能を提供し、重要なデータを保護します。データベースクラスターを作成する際、AWS Key Management Service (KMS) を利用して保存データを暗号化する機能がデフォルトで有効になっています。これにより、基盤となるストレージに保存されているデータ、自動バックアップ、スナップショット、リードレプリカがすべて暗号化されます。

また、クライアントとデータベース間の通信は、SSL/TLSを使用して暗号化することが可能です。 さらに、Amazon VPC(Virtual Private Cloud)内にデータベースを配置することでネットワーク的に分離し、AWS Identity and Access Management (IAM) ポリシーと連携してデータベースへのアクセスをきめ細かく制御することもできます。

メリット5 Amazon Aurora Serverlessによるコストの最適化

Amazon Aurora Serverlessは、アプリケーションの負荷に応じてコンピューティング性能を自動的にスケールアップ・ダウンさせる運用モデルです。 この機能により、トラフィックが予測不能、断続的、あるいは周期的なワークロードにおいて、コストを大幅に最適化できます。

例えば、開発・テスト環境や、夜間はアクセスの少ない社内アプリケーションなど、常に一定の性能を必要としない場合に最適です。データベースがアクティブでないときは自動的に停止し、コンピューティングリソースに対する課金が発生しないため、実際に使用した分だけの支払いで済み、無駄なコストを削減できます。

Amazon Auroraを導入する前に知っておきたいデメリットと注意点

Amazon Auroraは、その高いパフォーマンスや可用性から多くのメリットを提供する一方で、導入前に理解しておくべきデメリットや注意点も存在します。特に、特定のクラウド環境への依存度や、互換性のあるデータベースのバージョン制限は、長期的なシステム運用において重要な検討事項となります。

AWSへのベンダーロックインの可能性

Amazon Auroraを導入する際の最も大きな注意点の一つが、AWSへのベンダーロックインの可能性です。ベンダーロックインとは、特定のベンダーが提供する製品やサービスにシステムが深く依存し、他のベンダーのサービスへの乗り換えが技術的・コスト的に困難になる状態を指します。

Auroraは、その高性能を実現するためにAWSが独自に設計したストレージシステムなど、AWSのインフラストラクチャに最適化されています。 このため、一度Auroraでシステムを構築すると、将来的にオンプレミス環境に戻したり、Microsoft AzureやGoogle Cloud Platformといった他のクラウドサービスへデータベースを移行したりする際に、単純なデータ移行だけでは済まない可能性があります。アプリケーションのアーキテクチャ変更や、移行に伴う高額なコスト、長い移行期間が発生するリスクを考慮する必要があります。

このリスクを完全に排除することは困難ですが、アプリケーション層でデータベース固有の機能への依存を避ける設計にするなどの対策によって、影響を軽減することは可能です。

MySQLやPostgreSQLの特定のバージョンにのみ対応

Amazon AuroraはMySQLおよびPostgreSQLと高い互換性を持っていますが、すべてのバージョンに対応しているわけではないという点に注意が必要です。 既存のオンプレミスや他の環境で稼働しているMySQLやPostgreSQLからAuroraへ移行を検討する場合、現在利用しているデータベースのバージョンがAuroraでサポートされているかを事前に必ず確認する必要があります。

もし利用中のバージョンがサポート対象外であった場合、Auroraへ移行する前にデータベースのバージョンアップ作業が必要になります。バージョンアップには、アプリケーションの動作検証や改修が伴う可能性があり、予期せぬ工数やコストが発生する原因となり得ます。

また、オープンソース版のMySQLやPostgreSQLで新しいメジャーバージョンがリリースされても、Auroraがそのバージョンに対応するまでにはタイムラグが生じることがあります。最新の機能を利用したい場合には、このタイムラグが制約となる可能性も考慮しておきましょう。

対応バージョンは随時更新されるため、移行を計画する際には、必ずAWSの公式ドキュメントで最新の情報を確認することが重要です。 以下は、対応しているバージョンの一般的な例です。

データベースエンジン 互換性のある代表的なメジャーバージョン
Amazon Aurora (MySQL互換) MySQL 5.7系, 8.0系など
Amazon Aurora (PostgreSQL互換) PostgreSQL 11系, 12系, 13系, 14系, 15系など

これらのデメリットと注意点を十分に理解し、自身のシステムの要件や将来の展望と照らし合わせた上で、Amazon Auroraの導入を検討することが成功の鍵となります。

Amazon AuroraとMySQL・PostgreSQLの違いを徹底比較

Amazon Auroraは、MySQLおよびPostgreSQLと互換性を持ちながら、クラウドに最適化された独自のアーキテクチャにより、パフォーマンス、可用性、耐久性の面で大きな違いを生み出しています。既存のアプリケーション資産を活かしつつ、より高い性能と信頼性を求める場合に最適な選択肢となり得ます。ここでは、具体的な違いを詳しく掘り下げていきます。

パフォーマンスとスループットの違い

Auroraの最も大きな特徴は、その卓越したパフォーマンスにあります。これは、従来のMySQLやPostgreSQLのアーキテクチャを根本から見直し、クラウドネイティブな設計思想を取り入れた結果です。

独自のストレージシステムによる高速化

従来のデータベースでは、コンピューティング(クエリ処理など)とストレージが密に結合していました。一方、Auroraはコンピューティングとストレージを分離し、ログ処理の多くをストレージ層にオフロードする独自のアーキテクチャを採用しています。 これにより、データベースエンジンの負荷が大幅に軽減され、特に書き込み処理のスループットが劇的に向上します。AWSによると、標準的なMySQLと比較して最大5倍、PostgreSQLと比較して最大3倍のスループットを実現するとされています。

リードレプリカの数と性能

読み取り処理の負荷を分散させるリードレプリカにおいても、Auroraは優位性を持っています。Auroraでは最大15個のリードレプリカを作成可能で、共有ストレージアーキテクチャにより、レプリケーションの遅延(レプリカラグ)は通常100ミリ秒未満と非常に小さいのが特徴です。 これに対し、Amazon RDS for MySQL/PostgreSQLのリードレプリカは最大5個(MySQLの場合。PostgreSQLはバージョンによる)までとなっており、非同期レプリケーションの仕組み上、遅延が大きくなる可能性があります。

可用性と耐久性の違い

ミッションクリティカルなシステムにおいて、サービスの継続性は最も重要な要件の一つです。Auroraは、障害発生時にもサービス停止を最小限に抑えるための高度な仕組みを備えています。

ストレージの冗長化と自己修復機能

Auroraのデータは、1つのAWSリージョン内の3つのアベイラビリティーゾーン(AZ)にまたがって、データブロックが6重にコピーされます。 これにより、AZ単位の障害が発生してもデータの損失を防ぎ、高い耐久性を確保します。さらに、ストレージボリュームは常にスキャンされ、障害が検出されると自動的に修復される自己修復機能を備えています。

高速なフェイルオーバー

プライマリインスタンスに障害が発生した場合、Auroraは自動的にリードレプリカの1つを新しいプライマリインスタンスに昇格させます。このフェイルオーバー処理は非常に高速で、多くの場合30秒未満で完了します。 これにより、アプリケーションのダウンタイムを最小限に抑えることが可能です。RDS for MySQL/PostgreSQLのマルチAZ構成でも自動フェイルオーバーは可能ですが、完了までに通常1〜2分程度かかります。

料金体系とコスト構造の違い

AuroraとRDS for MySQL/PostgreSQLでは、料金体系にも違いがあります。単純なインスタンス料金だけでなく、ストレージやI/Oのコストも考慮して比較することが重要です。

以下に、主な料金要素の違いをまとめました。

項目 Amazon Aurora Amazon RDS for MySQL/PostgreSQL
DBインスタンス 時間単位の課金(オンデマンドまたはリザーブドインスタンス) 時間単位の課金(オンデマンドまたはリザーブドインスタンス)
ストレージ 使用した分だけ1GB単位で課金(最大128TBまで自動スケール) プロビジョニング(確保)した容量に対して課金
I/O Standard: 100万リクエストあたりの料金
I/O-Optimized: I/O料金は発生せず、インスタンスとストレージ料金に一本化
ストレージタイプ(gp2, gp3, io1など)に含まれるか、別途プロビジョンドIOPSとして課金
バックアップ
ストレージ
アクティブなクラスターのバックアップは無料(保持期間内) プロビジョニングされたDBストレージサイズの最大100%まで無料

Aurora Standard構成は、I/Oリクエスト数に応じて料金が変動するため、予測が難しい場合がありますが、I/O負荷が高いワークロード向けに料金が予測しやすいI/O-Optimized構成も選択可能です。 一方、RDSはストレージを事前に確保する分、利用量が少なくてもその分のコストが発生します。ワークロードの特性に合わせて、トータルコストをシミュレーションすることが賢明です。

Amazon Auroraの料金体系をわかりやすく解説

Amazon Auroraは、利用した分だけ料金を支払う従量課金制を採用しており、初期費用や最低利用料金は発生しません。 料金は主に「データベースインスタンス」「ストレージとI/O」「データ転送」の3つの要素で構成されており、これらを理解することがコストを最適化する鍵となります。本章では、それぞれの料金要素について詳しく解説します。

データベースインスタンスの料金

データベースインスタンスの料金は、選択するインスタンスのスペック(vCPU数やメモリ容量)によって決まります。 料金は1時間あたりの単価が設定されており、インスタンスを起動している時間に応じて課金されます。 ワークロードの要件に合わせて様々なインスタンスタイプから選択でき、オンデマンドでの利用のほか、1年または3年の長期利用をコミットすることで割引が適用されるリザーブドインスタンスを選択することも可能です。

ストレージとI/Oの料金

Amazon Auroraのストレージ料金は、データベースが実際に使用するストレージ容量(クラスターボリューム)に基づいてGB単位で課金されます。 特徴的なのは、ストレージ利用量に加えて、データベースへの読み取り・書き込み処理の回数、すなわちI/Oリクエスト数に対しても料金が発生する点です。 この料金体系を理解し、アプリケーションの特性に合わせて最適な設定を選択することが重要です。

StandardとI/O-Optimizedの違い

Amazon Auroraでは、ワークロードの特性に応じてコスト効率を高めるために、「Standard」と「I/O-Optimized」という2つのストレージ設定が提供されています。

I/O利用料が予測しづらいワークロードや、I/Oが多いアプリケーションでは、I/O-Optimizedを選択することでトータルコストを削減できる可能性があります。 どちらの構成が最適かは、AWSのコスト管理ツールなどを活用して試算することが推奨されます。 それぞれの料金特性を以下の表にまとめました。

設定 ストレージ料金 I/O料金 適したワークロード
Standard 比較的安価 I/Oリクエスト100万回ごとに課金 I/Oが少ない、または中程度のアプリケーション
I/O-Optimized Standardより高価 無料 I/Oが多い、またはI/Oのスパイクが発生しやすいアプリケーション

詳細な料金については、Amazon Aurora の料金ページで最新の情報をご確認ください。

その他の料金(バックアップ、データ転送など)

上記の基本料金に加えて、いくつかの追加料金が発生する場合があります。

  • バックアップストレージ: 自動バックアップと手動スナップショットのためのストレージ領域です。データベースクラスターサイズと同量までの自動バックアップストレージは無料で提供されますが、それを超える分や保持期間を過ぎたスナップショットには料金が発生します。
  • データ転送: AWSのリージョン外やインターネットへのデータ送信(OUT)には、データ転送量に応じた料金がかかります。 同一アベイラビリティーゾーン内のAmazon EC2インスタンスとAurora間のデータ転送は無料です。
  • その他の機能: Aurora Global DatabaseやBacktrackなど、特定の機能を利用する場合には別途料金が設定されています。

Amazon Auroraの代表的なユースケース

Amazon Auroraは、その卓越したパフォーマンス、高いスケーラビリティ、そして堅牢な可用性から、多岐にわたるシステムのデータベース基盤として採用されています。商用データベースに匹敵するパフォーマンスと可用性を、オープンソースデータベースのシンプルさ・コスト効率で実現することを目指して設計されており、特に高い性能と信頼性が求められるサービスでその真価を発揮します。 ここでは、Auroraが活躍する代表的な3つのユースケースを具体的に解説します。

大規模なWebアプリケーションやECサイト

アクセスの急増やセール時の瞬間的な高負荷が頻繁に発生する大規模WebアプリケーションやECサイトは、Auroraの最も得意とする領域の一つです。例えば、テレビ番組でサービスが紹介された直後や、大規模なセールイベント開催時には、データベースへのアクセスが通常時の数十倍から数百倍に跳ね上がることがあります。従来のデータベースでは、こうしたトラフィックのスパイクによってレスポンスが著しく低下したり、最悪の場合サービスが停止したりするリスクがありました。

Auroraは、標準的なMySQLと比較して最大5倍、PostgreSQLと比較して最大3倍のスループットを発揮するよう設計されています。 また、読み取り処理の負荷を分散するためのリードレプリカを最大15個まで、低遅延で作成可能です。 これにより、大量の同時アクセスが発生した場合でも、アプリケーションのパフォーマンスを維持し、安定したサービス提供を実現します。実際に、毎日新聞社ではニュースサイトのデータベースにAuroraを採用し、1年以上にわたり100%の稼働率を達成しながら、ページの年間ビュー数を20%増加させました。

マルチテナントアーキテクチャのSaaS

SaaS(Software as a Service)アプリケーション、特に多数の顧客企業(テナント)にサービスを提供するマルチテナントアーキテクチャにおいて、データベースの効率的な管理とコスト最適化は重要な課題です。テナントごとにデータは論理的に分離しつつ、データベース基盤は共有することでコストを抑えるのが一般的ですが、テナントごとの利用状況のばらつきや、特定のテナントでの急な負荷増に対応できる柔軟性が求められます。

このような要件に対し、Amazon Auroraは非常に有効な選択肢となります。特にAmazon Aurora Serverless v2は、アプリケーションの要件に応じてリソースを自動調整し、コストを最適化できるため、SaaSのユースケースに最適です。 実際に利用されたコンピューティングリソースとストレージに対してのみ料金が発生するため、利用頻度の低いテナントが多い場合や、開発・ステージング環境など、常にデータベースを稼働させる必要がない場合に大きなコスト削減効果が期待できます。 あるグローバルなEコマースSaaSプロバイダーは、Aurora Serverless v2を活用してデータベースアーキテクチャを最適化し、リソース使用率の向上と運用作業の簡素化を実現しました。

オンラインゲームのバックエンド

数百万人のプレイヤーが同時に接続し、リアルタイムでのインタラクションが求められるオンラインゲームのバックエンドでは、データベースに極めて低いレイテンシーと高い可用性が要求されます。 プレイヤーデータ、アイテム情報、ランキングなど、膨大な量のデータを高速に読み書きし、いかなる時もサービスを停止させない信頼性が不可欠です。

Amazon Auroraは、独自の分散ストレージシステムにより高速なI/O処理を実現し、ゲーム内での操作に対する迅速なレスポンスを可能にします。 また、3つのアベイラビリティーゾーンにわたって6つのデータコピーを保持することで高い耐久性を確保し、障害発生時には通常30秒未満でフェイルオーバーが完了するため、サービスの中断を最小限に抑えることができます。 株式会社アカツキが提供する人気ゲームでは、Auroraの高い耐久性により、リリース後のアクセス急増時にも緊急メンテナンスを行うことなく安定したサービスを継続できました。 このように、Auroraはミッションクリティカルなオンラインゲームのバックエンド基盤として、多くの企業に採用されています。

Amazon Auroraに関するよくある質問(FAQ)

Amazon Auroraの導入を検討する際に、多くの方が抱く疑問について解説します。データベースの選定はシステムの根幹に関わる重要な決定ですので、ここで疑問点を解消し、最適な選択を行いましょう。

Amazon AuroraとAmazon RDSの具体的な違いは何ですか?

Amazon AuroraとAmazon RDSは混同されがちですが、両者の関係性を理解することが重要です。Amazon RDSは、様々なデータベースエンジンを提供するマネージド型リレーショナルデータベースサービスの総称です。一方、Amazon Auroraは、そのRDSの中で選択できるデータベースエンジンの一つであり、AWSがクラウドネイティブに再設計した高性能なエンジンです。

最も大きな違いは、そのアーキテクチャにあります。RDS for MySQLやRDS for PostgreSQLが従来のデータベースと同様のアーキテクチャを採用しているのに対し、Auroraは独自の分散ストレージシステムを利用しています。 これにより、パフォーマンス、スケーラビリティ、可用性の面で大きな優位性を持ちます。 具体的な違いを以下の表にまとめました。

比較項目 Amazon Aurora Amazon RDS (MySQL/PostgreSQL)
アーキテクチャ コンピューティングとストレージを分離した独自の分散ストレージ 従来のモノリシックなデータベースアーキテクチャ
パフォーマンス 標準的なMySQLの最大5倍、PostgreSQLの最大3倍の性能 標準的なパフォーマンス
可用性と耐久性 3つのAZに6つのデータコピーを自動で複製し、高い耐久性を実現 Multi-AZ構成により可用性を高めることが可能
リードレプリカ 最大15台まで作成可能で、フェイルオーバーも高速 最大15台まで作成可能(MySQL 8.0.35以降などバージョンによる)
ストレージ 最大128TiBまで自動で拡張 事前にプロビジョニングが必要

既存のMySQLやPostgreSQLからAmazon Auroraへの移行は簡単ですか?

はい、既存のMySQLやPostgreSQLデータベースからAmazon Auroraへの移行は、互換性が高いため比較的スムーズに行うことができます。 AWSは移行を支援するための様々なツールやサービスを提供しており、代表的なものにAWS Database Migration Service (DMS)があります。DMSを利用することで、データベースを稼働させたまま、ダウンタイムを最小限に抑えてデータを移行することが可能です。

また、すでにAmazon RDS for MySQLやRDS for PostgreSQLを利用している場合は、さらに簡単です。AWSマネジメントコンソールから数クリックするだけで、既存のデータベースのスナップショットを作成し、そのスナップショットからAurora DBクラスターを起動できます。

Amazon Auroraの最小構成の料金はどのくらいですか?

Amazon Auroraの料金は、データベースインスタンスのタイプ、ストレージ使用量、I/Oリクエスト数、データ転送量など複数の要素によって決まります。 そのため、「最小構成でいくら」と一概に断定することは難しいのが現状です。

料金は選択するインスタンスタイプ(例: db.t3.mediumなど)やリージョンによって変動します。正確なコストを見積もるためには、AWS公式の料金ページや、AWSが提供する料金計算ツールを利用して、ご自身のユースケースに合わせたシミュレーションを行うことを強く推奨します。 なお、Auroraには無料利用枠は現在提供されていませんが、バックアップストレージはデータベースクラスターサイズの100%まで無料です。

Amazon Aurora Serverlessとは何ですか?

Amazon Aurora Serverlessは、アプリケーションの負荷に応じてデータベースのコンピューティング性能を自動的に起動、シャットダウン、スケールアップ・ダウンするオンデマンド構成のサービスです。 これにより、トラフィックが少ない、あるいは予測不能なアプリケーションにおいて、コンピューティングリソースを効率的に利用し、コストを最適化できます。

データベースがアクティブでないときは自動的に停止し、その間のコンピューティング料金は発生しません。 開発・テスト環境や、利用頻度の低い社内ツール、トラフィックの増減が激しい新規サービスなどに特に適しています。

バックアップは自動で取得されますか?

はい、Amazon Auroraではバックアップが自動的に有効化されています。 Auroraはクラスターボリュームを継続的にAmazon S3にバックアップしており、ユーザーが指定した保持期間(1日から最大35日)内であれば、任意の時点への復元(ポイントインタイムリカバリ)が可能です。 この自動バックアップ処理は、データベースのパフォーマンスに影響を与えることなく実行されます。 また、保持期間を超えてバックアップを保管したい場合は、手動でDBクラスタースナップショットを取得することもできます。

まとめ

本記事では、AWSが提供する高性能なリレーショナルデータベース「Amazon Aurora」について、その基本概要からメリット・デメリット、MySQLやPostgreSQLとの違い、料金体系、そして具体的なユースケースまでを網羅的に解説しました。この記事の重要なポイントを以下にまとめます。

  • クラウドネイティブな高性能データベース: Amazon Auroraは、MySQLおよびPostgreSQLと互換性を持ちながら、クラウドに最適化されたアーキテクチャにより、商用データベースに匹敵するパフォーマンスとスケーラビリティを実現します。
  • 圧倒的な可用性と耐久性: データは3つのアベイラビリティーゾーンにまたがって6重に複製され、自己修復機能を備えています。これにより、データの損失リスクを最小限に抑え、障害発生時も迅速なフェイルオーバーでサービスの継続性を保ちます。
  • 運用管理の負担を大幅に軽減: フルマネージドサービスであるため、ハードウェアのプロビジョニング、パッチ適用、バックアップといった時間のかかる管理タスクが自動化され、開発者はアプリケーション開発に集中できます。
  • コスト効率の良さ: 高性能でありながら、商用データベースの10分の1程度のコストで利用可能です。さらに、利用状況に応じて自動でスケールする「Amazon Aurora Serverless」を選択すれば、コストの最適化も図れます。

Amazon Auroraは、その高いパフォーマンス、信頼性、そして運用効率の良さから、特に高い負荷や可用性が求められる大規模なWebアプリケーションやSaaS、オンラインゲームなどのバックエンドに最適なデータベースです。既存のデータベースの性能に課題を感じている、あるいはインフラの運用負荷を軽減したいとお考えであれば、Amazon Auroraは非常に強力な選択肢となるでしょう。

まずはAWSの無料利用枠などを活用し、小規模な環境でその優れた性能を実際に体感してみてはいかがでしょうか。

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