働き方改革により、企業におけるテレワークの導入が検討されるようになりました。2020年の4月には、COVID-19(新型コロナウィルス)が世界的に猛威をふるい、ICTを活用した在宅勤務を実現することは、IT業界では急務となっています。
ICTを活用したテレワークでは、ストレスのない処理速度が得られるセキュアな環境を、コストをかけずに構築することが求められます。VDI(Virtual Desktop Infrastructure:デスクトップ仮想化)は、そんな時代のニーズに対して注目されている技術のひとつです。
VDIでは、サーバー側で仮想化されたデスクトップ環境を構築し、クライアント側ではサーバーにアクセスをして業務を行います。したがって、クライアントの端末にアプリケーションをインストールする必要がありません。業務用のノートPCを自宅に持ち帰らなくても、クラウドを利用して使い慣れたデスクトップ環境で仕事ができます。
Citrix Cloud with Azure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop)は、Azureが提供するVDIのサービスのひとつです。Azure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop) (AVD) から Citrixの提供する「Citrix Cloud 」にアクセスして、仮想化されたデスクトップ環境を利用します。
ここでは、Citrix Cloud with Virtual Desktopの概要とともに、これまでVDIが抱えてきた課題を整理し、導入のメリットをまとめました。
![Citrix Cloud with Azure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop)とは?そのメリットを解説](https://www.cloud-for-all.com/hubfs/blog/images_compress/windows-virtual-desktop-merit.jpg)
Citrix Cloud with Virtual Desktopとは
まず、Citrix Cloud with Azure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop)の概要を解説します。Citrix Systemsの企業とソリューションを踏まえた上で、AzureにおけるCitrix Cloud with Azure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop)の構成や接続の流れから取り上げていきましょう。
Citrx Systemsはリモートデスクトップ構築のリーディングカンパニー
Citrx Systemsは1989年にアメリカのフロリダ州で設立されました。主力事業としてリモートデスクトップの開発を手掛け、現在は仮想化ソフトウェアに加えてネットワーク機器も販売しています。
マルチユーザーによるリモートデスクトップ環境は「シンクライアント(Thin Client)」と呼ばれます。
シンクライアント自体は1960年代以降、UNIXなどのメインフレーム(汎用機)で使われていた技術です。強力な処理能力を持つメインフレームで中央集権型の処理を行い、専用端末では最小限の処理を行うアーキテクチャとして登場しました。クライアント端末にはハードディスクなどを搭載せずに「薄い(Thin)」仕様にできることが、シンクライアントの語源です。
設立当初、Citrx Systems はUNIXのソフトウェアを開発および販売していましたが、1900年代以降はWindows環境に移行して成長しました。Windowsサーバーでリモートデスクトップ環境を提供し、シンクライアントの分野でリーディングカンパニーとして高く評価されてきました。
その後、PCの処理能力が飛躍的に向上し、2000年以降に仮想化技術のめざましい進展とクラウドの利用拡大によって、VDIの領域を開拓しました。歴史的な流れからも分かるように、シンクライアントとVDIは別のものではありません。VDIはシンクライアントの一部に位置づけられます。
簡単にいえば、シンクライアントで実績のあるCitrxのVDIをAzure上で利用できるようにしたソリューションが、Citrix Cloud withAzure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop)です。
Citrix Cloud with Azure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop)の構成と接続の流れ
ところで、MicrosoftがAzureで提供するVDIのサービスに「Azure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop)(AVD)」があります。
AVDはAzureにおける仮想化によるデスクトップ環境およびアプリケーションのサービスです。利用しているすべての端末で最新のWindows 10を提供するマルチセッション、Office 365 ProPlusの最適化、既存のWindows Serverリモートデスクトップ環境の移行などによる生産性向上を実現します。統合されたAVDコントロールプレーンで簡単に管理できること、数分でデプロイできることもメリットです。
Citrix Cloud with Azure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop)は、AVDコントロールプレーンをCitrix Cloudに置き換えることによって、Citrix Virtual Apps and Desktops Serviceなどを提供します。
AVDはVDI導入のハードルを下げる役割があります。さらに企業には、合併や買収によって複数の異なったシステム環境の統合、高度なセキュリティの実現、開発環境やCADによるVDIの実現など、さまざまな要望があります。Citrix Cloud with Azure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop)は企業のニーズに応え、きめ細かな設定を可能にしてAVDの価値を最大化します。
システム構成上として、クライアントからクラウドへ接続はAzure Gateway Servicesとともに、閉域接続網としてExpress Routeによる接続も可能です。
接続の流れを簡略化すると、ユーザー認証はCitrix GatewayからCitrixのStoreFrontに認証情報が送信され、Active Directoryで認証、CitrixのDelivery ControllerがVDA(Virtual Desktop Access)ライセンスでリソースの確認を行い、ICA(Independent Computing Architecture)ファイルを作成して、接続されたデバイスに配信します。ICA通信プロトコルはCitrx Systemsが開発した高いパフォーマンスを実現する通信技術です。このICAプロトコルによってDelivery Controllerを中心にさまざまなリソースの利用が可能になります。
AVDコントロールプレーンはCitrix Cloudに置き換えられるため、デバイス側としてはCitrix Workspaceというクライアントソフトウェアを利用します。Citrix Virtual Appsは、Windows OSサーバー上のアプリケーションおよびデスクトップ、Citrix Virtual DesktopsはWindows OSアプリケーションおよびデスクトップのリモート操作環境を提供します。
VDIのコストダウンとユーザビリティの向上
ここまでの解説で、Citrix SystemsがシンクライアントのリーディングカンパニーとしてVDIソリューションの信頼性が高いこと、AVDにさまざまな付加価値を加えられること、という2つのメリットについて触れました。続いてCitrix Cloud withAzure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop) について、コストダウンとユーザビリティの向上という2つの側面からメリットを挙げていきます。
オンプレミスVDIのボトルネックを解消する「コストダウン」
主にテレワーク実現の技術として需要が高まっているVDIですが、自社サーバーで構築して社内で使っている企業もあります。官公庁や教育機関などを中心に、CADを扱う製造業や海外拠点を持つ企業にも導入されてきました。
しかし、自前でVDIの環境を整備する場合、まずデータセンターを構築する必要があります。したがって、機材の調達、設計、システムの構築、検証、保守管理など膨大なコストがかかりました。莫大な予算を投資しなければならず、経営陣の承認を得るために長い説得の時間を費やさなければなりません。また、機材の所有によって莫大なメンテナンス費用が必要でした。
しかし、Citrix Cloud with Azure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop)はクラウドを利用するため、社内に物理的なデータセンターの場所を確保する必要がなく、スモールスタートで柔軟に拡張することが可能です。したがって、初期費用を抑えて大幅なコストダウンと稼働させるまでの時間を短縮できます。
直感的な管理コンソールなどVDIの「ユーザビリティを向上」、セキュアで快適に
オンプレミスによるVDIで、コスト面とともに指摘される不満は「使えない」ことでした。
Windows 7のように延長サポートが終了すると、システムの更新や最新のセキュリティに対応できないため運用リスクが高まり、サーバーを置き換える必要があります。また、システムが固定されるため拡張性が低く、バージョンアップしても利用できない機能が発生します。業務で活用するためには多額の追加投資が必要です。
ところがクラウドを利用したVDIは、最新の仮想マシンをすぐに利用できます。システムの更新やコストに煩わされることがなく「VDIをどのように活用するか?」という具体的な業務改革に注力できるメリットがあります。
Citrix Cloud with Azure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop)のCitrix Virtual Apps and Desktops Servicesでは、GUIを採用した直感的に操作できる管理コンソールによって、PowerShellやREST APIなどを使って設定したミスを減少させます。特別なプログラムを習得する必要もありません。クライアントに対しては、ビデオ会議のパフォーマンスを向上させるHDXテクノロジによって、快適なユーザーエクスペリエンス(UX)を提供します。
BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)の面では、サイバー攻撃などに対するセキュリティが重視されています。Citrix Cloud with Azure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop)は、ゼロトラストのセキュリティによって信頼できるネットワーク環境を構築します。
Citrix SmartAccessにより、きめ細かなアクセス制御やセキュリティポリシーの運用が可能です。加えてCitrix Analyticsを介してAzure Active Directory Identity Protection、Azure Sentinelなどと連携できます。
まとめ
AzureのAVDは、VDIの構築を簡易化します。そのVDIの機能を充実させるためのソリューションがCitrix Cloud with Azure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop)です。パンデミックの時代においてテレワークを見据えて、あらためて低コストおよび短期間で構築することができ、拡張性の高く、セキュアなVDIを見直す必要があるかもしれません。
社会全体が変わりつつあります。変わりつつある社会を支えるテクノロジのひとつとして、Citrix Cloud with Azure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop)は注目のソリューションです。