仮想デスクトップ

シンクライアントとは?仕組みや種類、メリット・デメリット

近年普及しているテレワークにはメリットが多い一方で、十分なセキュリティ対策が欠かせません。テレワークを実現するためのソリューションとして、「シンクライアント」が注目されています。しかし、シンクライアントについて詳しくご存じない方も、多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、シンクライアントの仕組みや種類、メリット・デメリットなどについて、図解も交えてわかりやすく解説します。

シンクライアントとは?仕組みや種類、メリット・デメリット

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シンクライアントとは

シンクライアントとは、サーバー上のデスクトップをクライアント端末(個人PCなど)から利用できる仕組みです。シンクライアントの「シン」は、英語のthin(薄い、厚みのない)を意味します。最小限の機能・リソースしか持たないクライアント端末でも利用できるため、このように呼ばれるのです。

まずは、シンクライアントの仕組みや歴史、類似用語との違いについて順番に解説します。

シンクライアントの仕組み

通常、デスクトップに必要なOSやアプリケーションは、ユーザーが用いるPC内にインストールされます。これは「ファットクライアント(fat client)」と呼ばれるもので、シンクライアントとは対照的です。fatは「豊富な」という意味で、クライアント端末が豊富な機能やリソースを持つため、このように呼ばれます。

一方シンクライアントでは、クライアント端末が持つのはキーボード・マウスからの入力や画面出力、サーバーとの通信など最小限の機能のみです。クライアント端末は、サーバーと暗号化されたネットワーク通信を行います。クライアント端末での操作をサーバー上で処理し、その結果をクライアント端末に返す、という仕組みです。

データ管理やアプリケーション実行といった大半の機能は、サーバーが担います。OSやアプリケーションはサーバー上にあるため、ユーザーが個別にインストールする必要はありません。リソースの少ないPCでも、シンクライアントであれば環境構築などを行わずにデスクトップを利用できます。

シンクライアントの歴史

シンクライアントという言葉が使われるようになったのは、1990年代後半のことです。当時のPCは企業にとって2022年2月現在よりも高価なもので、豊富な機能を搭載した高価格な製品は、なかなか普及しませんでした。そんななかで、より安価なシンクライアント端末が開発されるようになりました。

最初のシンクライアント端末は、オラクル社が1996年に発表した「ネットワークコンピュータ」です。この製品はHDD(ハードディスク)を持たず、最小限の機能・リソースにとどめることで低価格を実現。しかし、当時はシンクライアントという概念よりも、価格やデザインに注目が集まりました。

その後、マイクロソフト社などの大企業も参入したことで、シンクライアントは徐々に浸透していきました。シンクライアントの普及を加速させたのは、2000年代後半に発達したサーバー仮想化技術です。詳細は後述しますが、この技術によってシンクライアントの利便性が飛躍的に向上しました。

ゼロクライアントとの違い

ゼロクライアント(Zero Client)とはシンクライアント端末の一つの形態です。一般的にシンクライアント端末は、汎用的なオペレーティングシステムを搭載しています。

それに対してゼロクライアント端末は、WindowsやLinuxなどのオペレーティングシステムやHDDを搭載せずネットワーク接続とディスプレイ出力、キーボード、マウス入力のみを備えた端末を言います。データセンター上の仮想デスクトップ環境に接続するためだけのデバイスということです。

そのため導入や運用コストの低減につながるだけでなく、セキュリティにも優れています。代表的なゼロクライアント製品としてWyse(ワイズ)やNComputingなどがあります。

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シンクライアントがいま注目される理由

シンクライアントがいま注目される最大の理由は、テレワークが普及していることにあります。働き方改革や新型コロナウイルスの感染拡大といった時代の変化によって、近年ではテレワークの導入が広まっているのです。テレワークには無駄な移動時間の削減や、感染症のリスク回避など多くのメリットがあります。

しかし、企業がテレワークを導入するうえで、セキュリティ性の担保が大きな課題です。従来のファットクライアント端末では、アプリケーション導入やデータ管理がユーザーに委ねられます。そのため、マルウェア感染や情報漏えいなどのセキュリティリスクを、企業側で対策することが困難です。

その点シンクライアントを導入すれば、アプリケーションや各種データを全てサーバー側で管理できます。クライアント端末自体にはアプリケーションやデータが保存されないため、大半のセキュリティリスクを回避することが可能です。セキュリティ面以外にもメリットは多く、近年ではシンクライアントによりテレワークを実現する企業が増えています。

シンクライアントのメリット

シンクライアントを導入する主なメリットは、さまざまあります。以下で詳しく解説します。

事業継続性を確保できる

シンクライアントを導入することで、PCが使えなくなるリスクを低減でき、事業継続性の確保につながります。シンクライアント端末には故障しやすいHDDなどが存在しないため、通常のビジネス利用でPCが壊れることは少ないでしょう。

また、仮に災害などでPCが破損したとしても、サーバー上に存在するアプリケーションやデータに被害は及びません。サーバーやネットワーク環境が無事であれば、別の端末に切り替えるだけですぐに事業を再開できます。

管理がラクになる

シンクライアントであれば運用・保守の負担を軽減でき、管理がラクになります。シンクライアントでは、それぞれの個人PCにはOSやアプリケーション、データが保存されません。これらは1か所にあるサーバーで一元管理されるため、拠点やチームごとの管理が不要となるのです。

また、OSをアップデートしたりアプリケーションを追加したりする場合でも、サーバー側で対応できます。それぞれの端末を操作する必要がないため、管理者の負担軽減につながるでしょう。新しい社員に端末を手配する場合などにも、管理の手間が少ないためスムーズに手続きを進められます。

セキュリティ性が向上する

前述の通り、シンクライアントを導入することはセキュリティ性の向上につながります。シンクライアント端末自体にはデータが保存されないため、端末が攻撃されても情報漏えいの心配がありません。サーバーがウイルスに感染した場合でも、各社員が利用するシンクライアント端末への被害拡大を防げます。

また、各シンクライアント端末が利用するアプリケーションもサーバー側で把握できるため、不正なアプリケーションの導入を抑制できます。シンクライアント端末・サーバー間の通信は暗号化されるので、第三者による盗聴のリスクも低いでしょう。

ユーザーにとって利便性が高い

シンクライアントは管理者だけでなく、ユーザーにとっても利便性の面で大きなメリットがあります。アプリケーションはサーバー上で管理されるため、ユーザーが逐一アップデートする必要はありません。

またシンクライアントなら、インターネットにさえ接続できればサーバーにアクセス可能です。そのため、テレワークはもちろん外出先でも、ノートPCやモバイル端末からデスクトップを利用できます。シンクライアント端末には重要なデータが残らないため、オフィス以外での利用でも安心です。

シンクライアントのデメリット

シンクライアントにはメリットが多いものの、下記のようなデメリットも存在します。

  • 初期費用がかさみやすい
  • ネットワーク環境が必須
  • サーバーに負荷がかかる

シンクライアント環境の構築にあたっては、サーバー仮想化や暗号化通信などの技術が欠かせません。シンクライアント端末は軽量とはいえ、ユーザー数分用意するとそれなりのコストがかかります。これらのことを考えると、初期費用はどうしてもかさみやすいでしょう。

また、サーバー上のデスクトップを利用する仕組みのため、サーバーに接続できることが大前提となります。サーバーに接続するためのネットワーク環境がない場合は、オフィスにいたとしても利用できません。

さらに、デスクトップの処理の大部分をサーバーが担うため、多くのユーザーが同時に利用するとサーバー負荷は高まります。サーバーがダウンすればデスクトップを利用できなくなってしまうため、負荷分散などの対策が必要です。

仮想デスクトップとシンクライアントの違い

よく同一視されているシンクライアントとデスクトップ仮想化(VDI)ですが、これは半分正解半分不正解といったところです。仮想デスクトップとはシンクライアントの実装方式の一つで、シンクライアントそのものではありません。詳細な実装方式については後述します。

シンクライアントを構成する4種類の実装方式

ネットブートと画面転送

シンクライアントの実装方式は大別すると「ネットブート型」と「画面転送型」の2つ。後者はさらに3つの実装方式に分類されるので合計で4つの実装方式を持っています。

ネットブート型・サーバー上のOSなどをクライアント端末上で実行

「ネットブート型」とは、サーバー上のOSイメージファイルを用いて、シンクライアント端末でOSを起動(ブート)する実装方式です。ネットブート型は、次の1種類のみとなります。

1.ネットブート方式

「ネットブート方式」だとシンクライアント端末は、サーバー上にあるOSイメージファイルをダウンロードします。そして、それをシンクライアント端末が起動することで、OSを利用できるようになります。この方式は、シンクライアント端末側のCPUやメモリを用いてデスクトップを利用するのが大きな特徴です。

ユーザーがリソースを占有できるため、通常のPCとそれほど変わらないパフォーマンスで利用できます。一方で、通信データサイズが増大しやすく、安定的な利用には大容量のネットワークが必要です。シンクライアント端末にもある程度のリソースが求められることを考えると、コストはかさみやすいでしょう。

画面転送型・サーバーが処理した後の画面を転送

「画面転送型」とは、サーバー上でOSを稼働させて、その画面をシンクライアント端末に転送する実装方式です。ネットブート型とは異なり、サーバー側のリソースを用いてデスクトップを利用できます。画面転送型には、次の3方式が存在します。

2. SBC(サーバーベースコンピューター)方式・デスクトップ環境を共有

SBC

「SBC(サーバーベースコンピューター)方式」とは、1台のサーバーにある同一デスクトップ環境を、複数のシンクライアント端末で共用する方式です。

サーバーが複数のデスクトップ環境を持たない分、環境構築や運用のコストを抑えやすいメリットがあります。その反面、ユーザーごとにデスクトップをカスタマイズできないため、利便性では他方式に及びません。

3. ブレードPC方式・クライアントごとにブレードPCを準備

ブレードPC

「ブレードPC方式」とは、それぞれのシンクライアント端末が、個別の「ブレードPC」にあるデスクトップを利用する方式です。ブレードPCとは、ブレードという細長い基盤に、PC1台の構成要素(CPUやメモリなど)を集約したもの。ブレードPC方式では、1人のユーザーに対して1つのブレードPCが、サーバーとして与えられます。

各ユーザーは専用サーバーのリソースを占有できるため、パフォーマンスに優れています。また、シンクライアント端末ごとに、デスクトップをカスタマイズすることも可能です。一方で、ユーザー数分のブレードPCを用意しなければならず、単一のサーバーを用意するよりもコストは増大しやすいでしょう。

4. 仮想デスクトップ(VDI)方式・クライアントごとに仮想デスクトップを準備

VDI

仮想化ソフトを用い、1台のサーバー上に複数ユーザーのPC環境を構築する方式です。物理的には1台のサーバーの共有ですが、論理的には1人1台の仮想PCを利用することが可能です。4つのシンクライアント実装方式の中では最もバランスの取れた方式であり、多くの企業が導入している方式でもあります。

独立性が保たれているためユーザーはシンクライアント環境を意識する必要がなく、かつ管理性にも優れているのがポイントです。

シンクライアント端末の種類

シンクライアント端末は、主に次の4種類に分けられます。1つずつ、順番に解説します。

①デスクトップ型
デスクトップPCとして使えるシンクライアント端末です。持ち運びは難しいものの高スペックな製品が多く、それなりのリソースが求められるネットブート方式などに適しています。

②モバイル型
ノートPCとして使えるシンクライアント端末です。スペックではデスクトップ型に及ばないものの、通常のノートPCよりも軽量な製品が多く、容易に持ち運べます。外出先でデスクトップを利用したい方におすすめです。

③USBデバイス型
ファットクライアント端末に差し込むことで、シンクライアント端末化できるUSBデバイスです。既存のPCを流用できる分、コストを抑えやすいでしょう。

④ソフトウェアインストール型
ファットクライアント端末にインストールすることで、シンクライアント端末化できるソフトウェアです。USBデバイス型と同様に、コストを抑えやすいのが魅力といえます。

DaaSとの関係

シンクライアントと関連する用語に、「DaaS(ダース)」があります。DaaSとは「Desktop as a Service」の頭文字を取ったものです。ベンダーが提供する仮想デスクトップ環境を、クラウド上で利用できるサービスを指します。

DaaSは前述したVDIと同様に、サーバー仮想化技術を用いて複数のデスクトップ環境を構築します。VDIと異なる点は、デスクトップ環境を構築・運用する場所です。VDIの場合は自社サーバー上ですが、DaaSの場合はベンダーのサーバー上となります。

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まとめ

今回はシンクライアントの仕組みや種類、メリット・デメリットなど、幅広くお伝えしました。 シンクライアントとは、サーバー上のデスクトップをクライアント端末から利用できる仕組みです。アプリケーションや各種データは全てサーバー上で管理されるためセキュリティ性が高く、テレワークで注目されています。その一方で、サーバー仮想化などの技術が欠かせず、コストが増大しやすいのが難点です。 特に、自社サーバーでシンクライアント環境を構築するためには、多くの初期費用がかかります。コストを抑えてシンクライアントを迅速に導入するなら、クラウドサービスの一種であるDaaSがおすすめです。 DaaSの代表例としては、「Azure Virtual Desktop」や「Windows 365」が挙げられます。これらはマイクロソフト社が提供しており信頼性が高いため、初めてシンクライアントを導入する企業の方は、ぜひご利用ください。

参考:
AzureのVDI、期待が集まるAzure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop)‎(AVD)
CitrixのVirtual AppsとVirtual Desktopsの違いとは?さらに統合のメリットも解説

Windows Virtual Desktop ライセンスガイド
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