働き方改革推進において、もはや避けて通れないのがテレワーク環境の整備です。時間外労働の削減や業務効率化、ワークライフバランスの調整に有効なテレワーク環境は、政府が施行した働き方改革関連法案へ準拠するためにも欠かせないと考えられています。問題は、その実現方法や導入手順です。
一口にテレワーク環境といってもさまざまなタイプがありますし、いずれも実現は決して簡単ではありません。真っ先に考えなければいけないことは「ICT(情報通信技術)を使って、オフィスから離れた場所でも通常通り業務をこなせる環境の整備」です。テレワーク環境には多くのメリットがある反面、実現のためには手間と時間がかかります。
そこで採り入れたいソリューションがVDI(Virtual Desktop Infrastructure)やリモートデスクトップといったものになります。一般的に仮想化とはハードウェアリソースを最大限活用するために、特定の技術を使ってリソースを分割・統合することを意味します。デスクトップ仮想化を導入すればオフィスから離れた場所にいても、サーバーに集約されたデスクトップ環境にアクセスすることで同じデスクトップ環境が使えるようになります。
本記事で紹介するのは、混同されがちなVDIとリモートデスクトップの違いです。どちらも働き方改革に貢献するソリューションでリモートからデスクトップ環境にアクセスすることに変わりありませんが、実装方式などの違いからその特徴も異なります。環境ごとに適したデスクトップ仮想化を導入できるよう、VDIとリモートデスクトップの違いを知りましょう。
VDIの特徴、メリットとデメリット
サーバーに仮想化専用のソフトウェア(Microsoft Hyper-V、VMwareなど)をインストールして、その上に端末が利用する仮想デスクトップ環境を実行するのがVDI方式です。1人のユーザーに対して1台の仮想マシン(サーバー上で仮想化された、デスクトップの基礎となる環境)を割り与えるため、1台の端末を占有するのと同じ感覚で使用できます。
<メリット>
VDIでデスクトップ環境を整えるメリットは、「ユーザーごとに個別の仮想マシンを割り当てる」という点です。お互いに個々のデスクトップ環境にアクセスしながらもサーバーリソースを効率良く使うことができます。
また、操作する端末にはサーバーで実行されているビューだけが送られてきますのでPCから情報漏洩の心配もないため、いつでも、どこからでも、そして、どのような端末からアクセスしてもセキュリティは担保されるのです。
そのほかにも社内のPCをサーバーで一括管理できるためでPC管理コストを削減できるなど様々なメリットがあります。
<デメリット>
一般的に仮想デスクトップ環境を構築する際には、高度な技術が必要になります。また、今までとは全く違った運用方式になるため社内のサポート体制も新たに整える必要があるのです。最近ではMicrosoftが提供するDaaSサービスであるAVDなどの環境も整ってきたことから、そのような障壁はほぼなくなりつつあります。
リモートデスクトップの特徴、メリットとデメリット
リモートデスクトップは一般的に「RDS(Remote Desktop Service)」と呼ばれるデスクトップ環境の実装方式です。1台のサーバー(1つのサーバーOS)に複数のユーザーが接続して同じデスクトップ環境を使用するものを指しています。従来のデスクトップ仮想化といえばリモートデスクトップを指す場合が多かったものの、VDI市場が急成長したことで徐々に採用する企業が少なくなっています。
<メリット>
リモートデスクトップのメリットは、仮想環境に用いるデスクトップを最小限にとどめることで、コスト低減効果が望めることです。サーバー上にある仮想マシンを共有で使用するため、コスト削減を実現しながら一定の利便性も保ちます。
また、アップデートや再起動に伴うストレージ負荷が少ないことから、CPUとメモリのオーバーヘッドも少なく、一般的に1台にハードウェアでより多くのユーザーに対応することができます。
<デメリット>
一方、RDSのデメリットはユーザー個別の要件に対応できない点があります。RDSではユーザーが独自にアプリをインストールしたり、設定を変更したりはできないためカスタマイズ性がVDIに劣っています。そのため、特定業務での使用や共同作業型の使用に向いています。
それぞれの想定される導入シーン
以上のように、VDIとリモートデスクトップは同じデスクトップ仮想化であっても、実証方式とメリット・デメリットが大きく違います。従って、それぞれの想定される導入シーンが異なるためここで整理しておきます。
VDIの導入シーン
ユーザーごとに個別のデスクトップ環境を用意する必要があり、かつサーバーリソースを最大限活用したいというニーズがあればVDIがおすすめです。ほとんどのケースにおいてVDIが選択肢となることでしょう。ただし、環境を整えるためには初期投資が必要になることを知っておくべきでしょう。
リモートデスクトップの導入シーン
デスクトップ仮想化にかかる費用をとにかく押さえたい、なおかつユーザーが使う環境が一定ならばリモートデスクトップがおすすめです。リモートデスクトップはユーザー数分の仮想マシンを用意しなくてもよい分、複雑性はなくなります。
以上のように、VDIとリモートデスクトップには明確な違いがあることから、想定される導入シーンに応じて適切なデスクトップ仮想化を実現することが大切です。また、デスクトップ仮想化を実現するための方式はこれだけでなく、他にもブレードPC方式やDaaS(Desktop as a Service)の利用などがあります。正しい環境を導入するには、それぞれの特徴やメリットとデメリットを十分に理解した上で、自社環境に適したデスクトップ仮想化を目指せるよう心がけましょう。