大量のデータを効率よく管理していくには、データベースの活用が不可欠です。近年では、クラウド促進の流れもあり、これまでのオンプレミスからクラウド型のデータベースへ移行を進める企業が増えてきました。本記事では、クラウド型データベースの基礎知識と導入のメリットを解説するとともに、おすすめのサービス5選を紹介します。
クラウド型データベースとは?
クラウド型データベースとは、オンライン上でデータベースを利用できるサービスのことです。初期費用を抑えてスピーディーにデータベースの運用を開始できるだけでなく、インターネット環境とデバイスさえあればどこからでもアクセスできるなど、効率性の高さからも注目が集まっています。
これまでは、社内に専用のサーバーを設置してデータベースを構築し、ネットワークに接続してデータベースを利用するケースが大半でした。このようなオンプレミス型での運用形態は、自社に適したシステムを構築できるうえ、自由にカスタマイズできる点が大きなメリットです。
一方で、初期費用が高額になりやすく、専門的な知識を有する人材の確保やメンテナンス費用、トラブル発生時に自社で対応しなければならないなど、企業のリソースによっては導入のハードルが高いといったデメリットもありました。運用の自立しているクラウドサービスであれば、エンジニアの技術やスキルに頼らず、現場ユーザーが必要なときにデータベースを活用できるようになります。
クラウド型データベース導入のメリット
令和2年に総務省が公表した「企業におけるクラウドサービスの利用動向」では、一部でもクラウドサービスを導入していると回答した企業が、64.7%であったと報告されています。また、この中でファイル保管・データ共有にクラウド活用している企業の割合は、56%といった結果になっているようです。
このように、さまざまな企業が積極的にクラウド導入を進めるのは、メリットを享受できるからにほかならないでしょう。ここでは、データベースをクラウドで運用するメリットを紹介します。
引用元:令和2年 情報通信白書
導入コストの削減
クラウドでデータベースを運用すると、社内にサーバーを設置するための専用スペースを確保する必要がありません。また、システムの構築から運用まで自社で行うオンプレミスと比べ、人的コストの削減にもつながります。さらに、従量課金制を採用しているサービスであれば、ランニングコストの最適化にも期待できるでしょう。
ただし、データベースをクラウドへ移行する際に、単なる置き換え先といった考え方では、コスト削減にうまく結びつきません。中には、クラウドへの移行がライセンス費用の増額につながるケースもあるため、クラウドに適したシステムへと切り替えていく必要もあるでしょう。将来的にクラウドを積極的に活用していくのであれば、既存のITインフラを見直すことが重要です。
利用開始までの時間が短い
クラウドサービスの特徴は、必要な機能が揃ったシステムを購入するため、導入から運用までの時間を大幅に短縮できるというメリットがあります。オンプレミスの場合、運用開始までに数ヶ月かかるケースも珍しくないでしょう。市場変化の加速する現代において、長期間を要する大規模なプロジェクトへの取り組みは、それなりのリスクを伴うものです。
そのため最近では、クラウドサービスを導入してスピード感のある対応を目指す企業が増えていると考えられます。ITリソースを確保するためのコストを抑え、開発の手間がかからないクラウドサービスの導入は、このような観点からも非常に有用性が高いと判断できます。
セキュリティ管理がしやすい
クラウド型データベースの導入を検討していても、セキュリティの面からなかなか移行に踏み出せないという企業も多いのではないでしょうか。近年では、クラウドの拡大とともに、国際標準であるISO規格のセキュリティ認証を受けたサービスも多くなっています。そのため、クラウドへの移行がセキュリティレベルの向上につながるケースも少なくありません。
クラウドでは、サービスの提供元がセキュリティの脆弱性を診断したうえで、サイバー攻撃やマルウェアに対して十分な対策を講じてくれます。オンプレミスで必要としていた管理作業の手間が省ければ、貴重なリソースをコア業務へ充てることも可能です。
どこからでもアクセスできる
インターネット環境とデバイスさえあれば、ユーザーがどこからでも情報にアクセスできる利便性の高さもクラウドのメリットです。近年では、働き方改革や新型コロナウイルスの影響もあり、テレワークを導入する企業は増加傾向にあります。働き方が多様化する中で、従来のオンプレミスの運用では従業員が必要なデータにアクセスできず、作業効率が上がらないという課題がありました。
このような観点からも、クラウド型データベースの活用は、ニューノーマル時代の働き方に大きく貢献するといえるでしょう。自宅や出先で業務を遂行する従業員が、スマートフォンやタブレット端末を使って顧客情報をスピーディーに確認できれば、業務効率化による生産性の向上が実現します。
おすすめのクラウド型データベース5選
クラウド型データベースを導入する際は、目的がより明確であるほど成功に結びつきやすくなります。誰がどのタイミングでデータを入力するか、集めたデータをどう活用するか、データの発生頻度と保存するデータの量なども具体的にイメージしたうえで、自社に適したサービスを比較検討するようにしましょう。
ここでは、おすすめのクラウド型データベース5つをピックアップして、それぞれの特徴を解説していきます。
Microsoft Azure SQL Database
Microsoft Azure SQL Databaseは、Microsoft社から提供されているクラウド型データベースです。管理しているデータを自動的にバックアップする機能が実装されているため、自社でバックアップ作業を行う必要がありません。Microsoft製品との連携性にも優れています。フルマネジメントサービスのため、常に最新の状態で利用できるよう自動的に更新プログラムを適用してます。
CPUやメモリといったリソースのスケールアップ・スケールダウンも柔軟に行えるため、コストの最適化に有用です。ユーザーの利用環境に合わせて、データベースの管理法が選べる3つのデプロイオプションが用意されているのも特徴です。テンプレートを用いてノーコードでデータベースを作成できる操作性の高さも魅力的なサービスといえるでしょう。
Amazon RDS
Amazon RDSは、AWS(アマゾンウェブサービス)が提供するクラウド型データベースです。ソフトウェアの自動バージョンアップ・自動バックアップ機能の搭載に加え、暗号化通信やアクセス制限などセキュリティ対策も万全です。既存のデータベースの移行作業も容易に実行できます。
従量課金制と定額制の料金体系が用意されているため、短期間の利用や状況に応じて流動的に利用したい企業は従量課金制、ある程度長期的な利用を検討しているのであれば定額制と、目的や用途に応じて料金プランを選択でき、運用コストの最適化が見込めます。
Google Cloud SQL
Googleが提供するGoogle Cloud SQLは、実用性の高いデータベース管理システムであるMySQL、事前に定義したデータの集合体を管理するPostgreSQL、Windows OSとの相性がよく導入事例の多いデータベース管理システムのSQL Server向けにリリースされているサービスです。
フルマネージドサービスで、データのバックアップやシステムのメンテナンス、モニタリングなどのオペレーションはすべて一任できるため、ユーザーはデータベースを用いた業務の遂行に注力できます。他のGoogleサービスとシームレスに連携できるのも特徴で、BigQueryやGKEと接続して利用することも可能です。
楽々Webデータベース
楽々Webデータベースは、住友電工情報システムがリリースしている業務効率化ツールです。Excel業務を簡単にWeb化できるのが大きな特徴であり、Excelから取り込んだデータをデータベース化したり、チーム全員で情報を共有したりすることも可能です。帳票出力やフォーム制御、クロス集計、グラフ化といった多彩な機能を実装しています。
アンケートの集計や課題管理、在庫管理にExcelをよく活用する企業におすすめのサービスです。なお、楽々Webデータベースでは、データの入力作業は従来通りExcelで行います。新たなツールやサービスを導入すると、現場のユーザーが慣れるのに苦労しがちですが、そのような心配は必要ありません。
kintone
サイボウズ株式会社が提供する「kintone」は、ノーコードでデータベースが作成でき、社内に点在するさまざまな情報の集約や可視化に有用なサービスです。SNS感覚で利用できるため、コミュニケーションの活性化にも貢献してくれるでしょう。
拡張性にも優れており、100種類以上のサービスと連携して利用することも可能です。豊富なプラグインも用意されており、発想次第でデータベース以外の活用法も見出せるかもしれません。約20,000社以上の導入実績があるため、安心して利用できるのも魅力的なサービスです。
まとめ
クラウド型データベースは、コストの削減や管理作業の効率化など、さまざまなメリットをもたらしてくれます。すでにMicrosoft製品を利用している企業であれば、システムの構築からバックアップ作業の自動化を実現するMicrosoft Azure SQL Databaseの導入がおすすめです。